驚くことに、有名スーパーや企業などから迎えてきた700社近い視察・見学希望者には、おはぎなどの作り方や調味料の配合をのぞき、隠していない。
「『さいち』で学んだと言ってくれたら、宣伝にもなりますしね(笑)」
そう簡単に再現できるとは思えないが、東北の小さなスーパーの挑戦に励まされる経営者は多い。現社長・専務夫妻はNHKの番組『プロフェッショナル』でも取り上げられ、反響を呼んだ。地元御用達として生鮮品や日用雑貨も並び、観光客向けには月に2000個も売れた東北限定『LOOKずんだチョコ』、『牛タンサイダー』といったユニークな商品、珍しい日本酒もそろえる。
この懐の深さに抱かれ、ご家族の思いが満ちる店内で、何とも温かな気持ちになるスーパー。それが“伝説の店・さいち”だ。
名家のセンスが光る! 地元の逸品も充実の『スズキヤ』
創業116年を迎える『スズキヤ』は、神奈川県の逗子のほか、鎌倉・葉山などに店舗を構える老舗。湘南のイメージそのまま、ちょっとおしゃれでセンスのいい品ぞろえが客の心をとらえるスーパーだ。
逗子駅前店を探すと、「SUZUKIYA」の名前と同時に、併設されている『スターバックスコーヒー』と葉山の日本料理『日影茶屋』、パティスリー『ラ・マーレ・ド・チャヤ』がコラボしたカフェが目に入る。現スズキヤ社長の次兄が日影茶屋に婿入りし、のちに初代スターバックスコーヒージャパンCEOを務めた縁ゆえだそう。
入り口近くには、みずみずしい野菜や全国から届いた美しい果物が。目につくのは、地元の無農薬野菜や多彩なハーブだ。店長の大川洋さんは、
「逗子は、食へのこだわりや高い健康意識をもつお客様が多いですね。イタリア料理用の食材やワインにも多くのご要望があり、数は少ないですが10万円を超えるワインもセラーに用意しているほどなんですよ」
と話す。葉山に御用邸がある皇室をはじめ、多くの文人や芸術家に愛されるエリアだなと納得。さすが!
「とはいえ、逗子といえばコレと言える名産品が少なかったんです。そこで近年開発が進められたのが、海藻のあかもく。さまざまな加工品が生まれ、当店にもコーナーを作っています」