部屋がゴミに埋め尽くされ、自分ではどうしようもできない。私に依頼してきた人のなかには、今回、片づけを請けてもらえなかったら死のうと思っていたという女性もいました。部屋が汚いという理由で死ぬことを考えている人もいます

 と語るのは、年間800軒以上のゴミ屋敷や汚部屋の清掃を請け負っている「株式会社 まごのて」の佐々木薫さん。

ゴミ屋敷になりやすい職業

 依頼者のほとんどは一人暮らし。女性が6割強を占める。

職業で圧倒的に多いのは医療従事者。特に夜勤があるような総合病院で働いている方が多いです。仕事のストレスで片づける心の余裕がないのでは。人の生死にかかわる現場にずっといるのですから」(佐々木さん、以下同)

 仕事はプロとして完璧にこなしているものの、家に帰ってコンビニで買ってきたごはんを食べたあと、ゴミをゴミ箱に捨てるのさえ面倒できないほど疲労していて、そのまま放置してしまう……それを日々、繰り返すことがゴミ屋敷化の第一歩となってしまうケースを多くみてきた。

『片づけが苦手』というのとは、ちょっと違う感じ。気持ちの落ち込みや人間関係のトラブルなど、わずかなつまずきがきっかけとなり、自分も気がつかないうちに普通の生活ができなくなっているんです。

 依頼者宅に伺う前に『ゴミの高さはどのぐらいまでありますか』と聞くと、『ひざまでの高さぐらいです』とおっしゃるんですが、その後、送られてきた写真を見ると胸の高さまであることも

 依頼者は「自分の家のゴミの現状を把握すらできていない」のも共通点だという。ゴミは少しずつ溜まっていき、それがいつしか見慣れた風景に。まるで長年ある家電か家具のように、違和感を覚えなくなってしまうのだ。