目次
Page 1
ー 冬の東京湾にダイブ
Page 2
ー 自宅住所や電話番号が筒抜け
Page 3
ー 風間三姉妹は今でも仲良し

 

「アイドルでありながら、生傷が絶えない毎日でした。歌番組でドレスを着るときはいつもファンデーションで隠すようにして。まさかばんそうこうを貼ってテレビに映れないじゃないですか(笑)」

 と言うのは、女優の大西結花。1986年放送のドラマ『スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇』(フジテレビ系)に出演し、大ブレイク。昭和を代表するアイドルのひとりとして、絶大な人気を博した。

冬の東京湾にダイブ

 大西が演じたのは主人公・風間三姉妹の長女役で、三女役の浅香唯、次女役の中村由真と共に敵に立ち向かう。アクションシーンも多かったが、当時はその大半をスタントなしで挑んだ。なかでも忘れられないシーンはと聞くと、

「ナンバーワンは、冬の東京湾に入ったこと!」

 と即答。まだレインボーブリッジもないころで、お台場が今のような観光地化される前のこと。海中で首にロープをかけられ、クルーザーで引っ張られるという何ともハードなシーンだったが、吹き替えなしで自ら演じている。しかも彼女、カナヅチだというから大変だ。

“すみません、私泳げないんです!”って言ったら、“ウエットスーツを着てれば浮くから大丈夫!”と言われて、ポイッて海に入れられて。東京湾の沖のほうでした。セーラー服の下にウエットスーツを着てはいたけれど、襟元から見えないように切り込みを入れていたので水がどんどん入ってくるんです。今だったら絶対ありえないですよね」

 撮影は早朝に始まり、深夜2時、3時まで続く。コンプライアンスなどどこ吹く風で、寝る暇もなく仕事に追われた。

「帰宅してお風呂に入り、髪の毛にタオルを巻きながら、ソファで翌日に撮影するシーンの台本を読んだままうたた寝しちゃったり。ベッドで寝る時間すらなかったですね」

 アイドルのあり方も今とは大きく違う。手の届く親しみやすいアイドルが主流の昨今と比べ、当時のアイドルは実体を伴わない偶像を演じなければならない。決して手の届かない存在であり、生活感は見せられない。