認知症で闘病していることが先ごろ発覚した声優の大山のぶ代(81)は、夫で俳優の砂川啓介(78)によれば、
・ついさっきしゃべったことを覚えていない。
・感情の起伏が激しい。
・『ドラえもん』を楽しそうに見てもその声が自分のものだと覚えていない。
・前日においしいと食べたものを次の日にはまずいと残す。
・エアコンのリモコンをテレビのそれと間違ってしまう。
などの症状が、2年くらい前から出始めていたという。
武里病院の大野智之院長は、
「普通、最近の記憶がなくなってから、昔の記憶も思い出せなくなる。声優をしていたことも忘れてしまっているということは、脳がその当時よりもさらに若返ってしまっている可能性があります」
夫の砂川さんは会見やメディアのインタビューで「彼女は完全に子どもになっている」と証言。16歳のときに亡くなった母の幻影を見ること、寝る前に『ドラえもん』の声で「おはようございます」とあいさつしに来るなど「やんちゃな娘ができた感じ」と一見無邪気な様子を伝えている。
たかせクリニックの高瀬義昌院長には、認知症の検査のひとつ『FAST分類』に照らし合わせてもらった。
「“認知機能障害なし”から“非常に高度の認知機能低下”まで7段階に分類されます。直接診ていないので完璧ではないですが、大山さんの感じは最も悪い症状の手前の“高度の認知機能低下”か、その前の“やや高度の認知機能低下”でしょうか。ですが、改善の可能性はもちろんあります」
改善の可能性について、川崎幸クリニックの杉山孝博院長は、『ドラえもん』をポイントに挙げる。
「大山さんの場合、『ドラえもん』の台本を渡すと、見事に読める可能性がある。そのとき“すごいですね!”とか“そっくりですね!”と周囲が褒めることで、本人も元気になれると思います。有名な場面をサイレントで流せば、すぐさま声を合わせることができるかもしれません。みんなの前で披露してもらい、人気者になれる機会をつくるのはいいことだと思いますよ」
大野院長によると、
「自分が声優をしていたということだけがよみがえってきた場合、ジャイアンやスネ夫のセリフまでドラえもんの声で読んでしまうこともあるかもしれませんが、該当個所にマルをつけてあげるなど誘導すればうまくいくのでは」
と、前向きな見解だ。
砂川さんによれば、大山さんは叫んだり暴れたりせず、徘徊もないとし、大山さん自身は、投薬治療を続けながら仕事をすることを望んでいるという。「現在は問題となる症状があまりない」と見る大野院長は、
「どちらかといえば、内向的なアルツハイマー型認知症という印象を受けます。暴れる、妄想が激しいなどの症状が出てきたら、新たな薬を使ったり通院頻度を上げる必要があるが、このままなら縁側でニコニコしているおばあちゃんになっていけると思います」
〈プロフィール〉
◎武里病院(埼玉)・大野智之院長
「医療・看護・介護の視点から認知症へのトータルケアを実践する」という理念のもと多くの認知症患者を治療。
◎たかせクリニック(東京)・高瀬義昌院長
在宅療養支援の第一人者として朝から晩まで訪問診療に精を出す。認知症患者を地域で見守る環境作りにも尽力。
◎川崎幸クリニック(神奈川)・杉山孝博院長
思いやりのある手厚い医療サービスに定評があり、遠方からの患者さんも多い。認知症に関する著書も多数出版。