今年の大河は、秀麗な“虎”が戦国の世を駆け抜ける──。
「城主として国を守り、“まっすぐな虎”という名前を持ち、戦国時代を生き抜いた女性がいたと聞いたとき、ぜひその井伊直虎という人物を大河ドラマで描きたいと思ったんです」
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』を制作統括する岡本幸江チーフプロデューサーは、主人公に魅せられた理由をこう話す。
井伊直虎。
徳川家康の“四天王”のひとりとして名を馳(は)せた井伊直政の養母で、幕末の大老・井伊直弼(なおすけ)の先祖。しかし、彼女についての資料はほとんど残されていない──。
歴史のベールに包まれたヒロインを現世に蘇(よみがえ)らせるのは『JIN-仁-』、『天皇の料理番』、朝ドラ『ごちそうさん』ほか数々のヒットドラマの脚本を手がけてきた森下佳子氏。
「朝ドラでは、め以子(杏)ちゃんの人生を“料理”というモチーフで描きましたが、大河ドラマは作品のモチーフが政治や駆け引きだと思っています。これまでやったことがないモチーフなので、すごく緊張しています。戦国時代は本心を簡単に出せないし、ときには大好きな人の命を落とすくらいまで裏切ることもあるかもしれない。それがこの時代のドラマの面白さだと思いますけど……。
資料が少なく、知っている人も少ないのであれば、私が、“この人カッコいい”とか“この人はすごい”と見ている方に思っていただけるような、魅力ある人物に仕上げたいと思っています」
1963年の『花の生涯』から始まり、今回で56作目となる大河ドラマ。いわゆる“戦国もの”と呼ばれる作品としては『天と地と』『国盗り物語』などの流れを受け19作目で、そのうち女性が単体で主人公になったものは『おんな城主 直虎』が4本目となる。
舞台は現在の静岡県西部地区にあたる遠江(とおとうみ)。強大な今川家に支配されながらも、井伊谷(いいのや)という小国を守ってきた井伊家。そのひとり娘・おとわは家を守るため、分家の幼なじみを許嫁(いいなずけ)とするが、彼は父親が謀反の嫌疑をかけられ国を追われることになる。