懲役14年6か月(求刑は懲役17年)─。2月28日、東京地裁立川支部で下された判決を裁判所の控室で弁護士に知らされた冨田真由さん(21)は「17年でも短いと思っていたのに……」と、ぽつりとつぶやき、以後絶句してしまったという。
冨田さんの代理人弁護士は、そのように明かした。
昨年5月21日、東京都小金井市で音楽活動をしていた女子大生の冨田さんを、無職の岩崎(旧姓・岩埼)友宏被告(28)がメッタ刺しにした事件。傷痕は全身に34か所。殺人未遂罪などに問われた。
裁判所は「被害者が抵抗できなくなっても執拗に刺し続けており、危険かつ悪質。死亡してもおかしくない容体だった。一定の計画性があり、殺意は非常に強固だった」と断罪した。
一命は取り留めたが、冨田さんは今も、後遺症に苦しんでいる。裁判の意見陳述で、次のように明かした。
「今でも毎日、リハビリを続けていますが、思うように身体が動きません。大好きだった歌うことも、食べることも、口に麻痺が残っていて、苦痛になっています。大好きだったギターもほとんど弾くことができません。
視力が低下していたり、視野が狭くなっていたり、常に行動に制限が出ています。そのため少し歩いたら、物や人にぶつかりそうになります。右足の親指にも麻痺が残っていて、家の中でさえすぐにつまずいてしまいます。“どうして当たり前にできていたことができないの”と悔しくてたまりません」
すると意見陳述の途中、岩崎被告は「じゃあ殺せよ」などと2度にわたり冨田さんに罵声を浴びせ、裁判長に退廷させられた。
冨田さんの弁護士は、
「裁判での受け答えの内容などから、きっとまた同じ状況になったらやると思っています。あそこまで反省していない被告人は他にいないですよ」
と、あきれ、判決についても「それをわかったうえで、あの判決はひどいと思いますね」と不快感をあらわにした。
裁判中に叫んだ被告の心理とは
意見陳述で「もうこの世の中に出てきてほしくない。今すぐ消えてほしいです。それが叶わないならば一生、刑務所にいてほしい。そうでないと安心して生活できません」と訴えた冨田さんが、判決に絶句するのも無理はない。
冨田さんは判決後、改めて文書で心情を発表した。