ミステリー作家・長岡弘樹さん「自撮り写真でユーモアたっぷり」
Q1.普段はどんな手紙を書きますか?
「お中元やお歳暮のお礼状、年賀状などは自撮り写真つきのハガキを使います。いざ書くとなると凝り性になってしまって、受け取った相手に楽しんでもらいたい気持ちが先立ち、おもしろくしようと頑張っちゃうんですね(笑)。温泉旅行のヌード写真や、ニャンコが僕の顔に悪さを働く写真など、写真選びは一大イベント。直筆のひと言も必ず添えるようにしています」
Q2.忘れられない手紙の思い出は?
「小学4年生のとき、友達グループのひとり、斎藤くんが転校することになり、残った5人で “それぞれ手紙を送ろう” と約束しました。でも僕はどうも面倒くさくて。 “書いた” とウソをついて出さなかった。後日、自分にだけ返信が届かなくて、みんなで見せ合おうという話になったところでバレましてね。因果応報ですが、責められましたね。それ以来、 “筆無精” と “ウソつき” はろくなことがないな、と学びまして。今、もらった手紙には、なるべく手紙で返すようにしているのはこの事件を引きずっているからかもしれません(苦笑)」
Q3.あなたにとって手紙とは?
「お風呂みたいなものですね。好きだけど、寒い日は服を脱ぐのがおっくうで面倒に思ってしまう。でも、入ってよかったと後で必ず思えます。手紙もいざ書こうと思うと座禅で気を鎮めるところから始まり、言葉選びや誤字に躓いてすごく時間がかかるので面倒なんです。それでも、書き終えてポストに投函したとき “書いてよかった” と、しみじみ思えることが多いんですよね。
また、筆跡でどんな性格か推測できるのも手紙の面白さ。以前、すごく頭のキレる知人が小学生みたいなガチャガチャの字を書いてきて驚きましたが、 “天才ほど頭の回転に字が追いつかなくて汚くなる” なんて説もあります。自分の字も同じように分析されると思うと、やっぱり怖いし毎回、緊張を強いられるものですね」
京菓匠『笹屋伊織』十代目女将・田丸みゆきさん「お菓子の絵で季節感」
Q1.普段はどんな手紙を書きますか?
「小さいときから手紙が好きで、今も巻紙に毛筆で書いたりもします。本当に親しい人にはほとんどメールですが、もう少し心を伝えたいと思うときは、直筆のほうが温かさが伝わると思っています。請求書にも一筆箋を添えています。
最近では、絵手紙も多くなりました。和菓子屋ですので、四季のお菓子の絵を私が描いて、ハガキにコピーして持ち歩き、必要なときに筆でひと言書き添えて出します。例えば、出張先でご馳走になったときは、ホテルに戻ってすぐにひと言書き入れてフロントへ持っていきます。あとで手紙を書こうと思っても筆をとる時間がなかったりしますからね。《ごちそうさまでした。楽しい時間をありがとうございました》というくらいの文を添えるんですよ」
Q2.忘れられない手紙の思い出は?
「私は短大卒業後、野村證券に入社しました。仕事はお客様に商品をご案内する投資相談課で、電話外交もしていましたが、なかにはまったく電話に出てくださらないお客様もいらっしゃいました。私は、そのようなお客様に何度もお手紙を差し上げました。
すると、そのお客様が私の手紙を手に “こんな手紙を書く人はどんな人なのか会ってみたくて来た” と店頭にいらしたんです。 “ありきたりの文章ではなく、いろいろなことが心に伝わってきて、この人の言うことだったら話を聞いてみようかと思った” と。 “絶対無理だ” と言っていた上司も驚いていましたね」
Q3.あなたにとって手紙とは?
「お返事は求めずに、気持ちを伝えるもの。お中元や、お歳暮を私は手持ちで持っていくことが多いんですが、先方と特にお約束はしていませんから、直接お渡しできないこともあります。そんなとき、一筆箋かカードに《いつもお世話になっております。みなさんでお召し上がりください》とひと言書いてお渡しするんです。その人のためだけに書くことで心も伝えられる、そう信じています」