「現場では自分との闘いでした。もっとこうしたいとか、期待に応えなきゃ、でもできないとか、葛藤の中にいて。結局、私にできることは、ちゃんと呼吸して、そこに立っていること。それだけのことなのに難しくて、でもすごく“生かされている”感じがしました」
“誰も見たことがない人のほうがリアリティーがある”という監督の思いから、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の主演に抜擢された新人・石橋静河(22)。『カロリミット』のCMにも出演して話題だ。
戸惑いと不安の中、ともに主演を務めた池松壮亮の存在が大きな支えになったと話す。
「現場で、“いつもここにいるから大丈夫、絶対受け止めるよ”っていう感じで隣にいてくれたので、安心感がありました。次第に私自身が(池松さんの)刺激になるように何かビックリさせたいって気持ちになって。池松さんがいなかったら成り立たなかったと思います」
作品では、東京という大都会で絶望と希望を抱えながらも前に歩み出そうとする男女の恋愛模様が繊細に描かれている。
「相手の言葉を肯定も否定もせずに聞くということはなかなかできないもの。好きな人であれば、余計にこうしたほうがいいよとか言いたくなっちゃう。でも(池松が演じた)慎二は“そうだね”って言うだけ。その関係がすごく素敵でした」
役者デビュー前はダンサーとして活躍
役者デビュー前はダンサーとして活躍していた石橋。父に石橋凌、母に原田美枝子と“大先輩”を両親に持つ彼女だが、幼いころは女優を夢見ていたわけではなかった。
「4歳からバレエを始めたんですが、その先に女優とは考えていませんでした。親を見て、大変な仕事で簡単な世界ではないとわかっていたので……。でも10代のころにアメリカとカナダにバレエ留学をして、そこで演劇の面白さに衝撃を受けて“こんなお芝居ならやってみたい”って思ったんです。昔から親には好きなことをさせてもらっていたので、今も“自分がやりたいことなら、頑張りなさい”って応援してくれています」
共演者、そして監督やスタッフにも恵まれ、役者として大きなステップを駆け上がり始めた石橋。今後はどんな女優に?
「女優……と呼ばれること自体まだ恥ずかしくて。“女優”ってすごい言葉じゃないですか(笑)。でも今後は芝居で生きていきたいし、食べてもいきたい。幼いころから始めたダンスも生かしながら、踊りとお芝居、両方で刺激し合ってそれがいい“表現”になれば。私だからこそできる“おもしろいこと”を見つけていきたいです」
<映画情報>
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
『舟を編む』の石井裕也監督の最新作。看護師をしながら夜はガールズバーで働く美香(石橋静河)と、工事現場で日銭を稼ぎながらひたむきに生きる青年・慎二(池松壮亮)。現代の東京に生きる男女の繊細かつ“最高密度”の恋愛模様を描く。
5月13日(土)より新宿ピカデリー・ユーロスペースにて先行公開、5月27日(土)より全国ロードショー