スピードスケートの女子1500メートルで、1位と0秒2という僅差で銀メダルを獲得した、高木美帆選手。やはりメダリストになる選手には、“仰天伝説”があったーー。
「“神の子”だと言った指導者の方もいましたが、それが言いすぎではないくらいの選手でしたねぇ」
そう話すのは、昨年まで帯広南商業高校スケート部顧問だった東出俊一さん。東出さんは、女子スピードスケートの高木美帆の高校時代の恩師だ。
「私は顧問ではありましたが、高校時代の彼女に、特に何かを教えたということはないんですよ(苦笑)。小学生のころから地元では知らない人は誰もいないくらい図抜けた存在で、中学生でオリンピックに出ている。本当に能力が高く、のびのびやってほしかったので、余計なことは言わないように気をつけて、たまにアドバイスした程度でした」(東出さん、以下同)
平昌では、1000メートル、1500メートル、3000メートル、団体追い抜きと4つの種目に出場する。
「競技もオールラウンダーなのですが、私生活においてもオールラウンダーな子なんですよ。地元でいちばんの進学校に入る学力もあったのですが、競技の関係で、うちの高校に入学しました」
中学時代には国内で敵なしといえる、天才少女だった高木だが、その才能はスケートだけにとどまらなかった。
「在学中もW杯であったり、国内外で遠征が多かったので、1年のうち3分の1程度は学校を休まざるをえなかった。それでいてテストなどは学年でトップレベルの成績を出す。学力だけでなくサッカーをやっても、ダンスをやっても、なんでもできる子でした」
今回は同じく東出さんの教え子である姉の菜那と、初めて姉妹での五輪出場となり、団体追い抜きに臨む。妹は15歳で'10年のバンクーバー五輪に初出場し、その年、姉は出場を逃した。'14年のソチ五輪では逆に姉が初出場を果たし、妹は出場を逃した。
「姉妹で性格はかなり異なりますね。姉の菜那は負けん気が強く勝負にこだわる。妹の美帆はさっぱりした性格です。タイプは違いますが、お互いに意識して努力する、いいライバル関係だと思いますね」
5大会連続で五輪に出場し、長野では銅メダルに輝いた岡崎朋美さんに美帆の印象を聞いた。美帆の初出場のバンクーバーは、岡崎さんにとってのラスト五輪でもある。
「すごく大人になりましたよね。バンクーバーのときは本当に“子ども”でしたから。いまは自分が考えていることを、きちんと言葉にして表現できるようになりましたね」
19日には、団体追い抜きの予選が行われる。
「トーナメントの初戦からオランダなどの強豪国に当たらなければ、よほどのことがない限りメダルは確実。むしろ逃すほうが驚きですね」(岡崎さん)
姉妹のチームプレーが、団体追い抜き初の金メダルをもたらすか。