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 コロナ禍でバイトやパートのシフトが減らされた──。月々の収入がグッと減り、このままでは生活できないかも……!? そういった状況に陥る人が増える中、なんと都内に月収10万円生活を満喫する女性がいるという。

 その名も「月収10万円 豊かな生活。」というブログを運営するのは、現在東京でひとり暮らしをする30代の女性、miさんだ。

東京で月収10万円でも豊かに暮らす

「仕事がある日は、朝起きたら家事をして、お腹がすいたらご飯を食べ、時間になったらバイトに行きます。決まったルーティンはなく、その日過ごしたいように過ごしています」

 外でバリバリ仕事をするより、家でのんびりマイペースに暮らしたいというmiさんは、1日6時間、週4日程度、ひと月の労働時間は100時間ほどという働き方をしている。すでに10年ほどこのスタイルを続けているそうだが、月によっては給料8万円でも生活には困らないというから驚きだ。

 都内在住で収入は平均10万円──。毎月の支出はどうなっているのだろうか?

 家賃は5万3330円と月収の約半分。+αで光熱費やネット・スマホ代などがかかり、それらを合わせると、ひと月の固定費はだいたい7万6000円程度。余ったお金を食費や日用品、趣味のものを買うのに充てているそうだが、驚くことにお金が足りなくなることはなく、むしろ少し余ることがほとんどだそう。

 月収10万円といっても、決して生活の質を落としてはいない。例えばデパートコスメを買うこともあればカフェでお茶をすることもあるし、湯船にはほぼ毎日つかっているという。

デパートコスメを愛用。値段は高いけど、量がたっぷり入っていることも多いし発色がよく、少量ですむことも多いので、1回あたりの単価で考えると実はドラッグストアで購入するプチプラと値段が変わらない商品も多い

 意外にも想像以上の豊かな生活を送っているmiさんだが、この生活を始める10年前までは月に25万円稼いでいた時代もあったそうで──。

「飲食店のバイトを掛け持ちし、1日12時間近く働いていました。月に25日間くらいは出勤していましたね。ただそのぶん自由に遊んだり買い物したりする時間はなく、1日中休みなく働くのは正直しんどかったです。しかも当時はこんなに働いて稼いだお金が減るのが不安で、外食などもあまりできませんでした」

 生活費は最低限15万円必要。遊ぶとなるとさらにお金がないといけない……。そのような固定観念にとらわれ、当時は時間のある限り必死に働いていたのだという。

辛い中で見つけた今の生活スタイル

 そんな中、就職しようと思い立ってバイトを整理したものの、仕事探しがうまくいかず、しばらくの間、つなぎとして始めた5万円のバイトだけが生活の糧になった。しかしこれが現在の月10万円の生活を始めるきっかけになったという。

「月収5万円になったときは家賃を払うのでいっぱいいっぱいでした。日雇いバイトをして補っていたこともあります。

 そこからようやく月収10万円くらいになったとき、25万円稼いでいたときみたいな生活はしんどいから10万円のままでいいかなと思い、今の生活に落ち着きました。

 ひと月5万円の生活から始まったので、10万円はむしろ余裕を感じるくらいです(笑)」

 働き方が変わっていちばんよかったのは、自由な時間が増え、心にも余裕が生まれたことだという。

「欲しいものがあるけどお金が足りないというときは、もともとが時間に余裕がある働き方をしているので、『今月は働く時間を増やしてお金を稼ごう』と考えられるんです。

 だから生活を切り詰めたり、欲しいものを我慢したりする必要もありません。働いてお金を貯めてるうちに気持ちが落ち着いて買わないこともあるのですが(笑)」

「お金がなくなったら人生詰む」とさえ信じていた月収25万円時代。精神的な余裕がなかったため、自分が困ったときにも助けは求めづらかったとmiさんは話す。

「今はバイト先でシフトに穴があいたときも、自分が代わりに入って周りの人を助けられるようになりました」

 買い物をするのはスーパーよりは米屋さんや魚屋さんなどの個人商店。店員さんとたわいのないおしゃべりをしながら、のどかな時間を過ごせるのが醍醐味だそうだ。

 今でこそ心にも金銭にも余裕を持てるようになったmiさんだが、初めから上手にお金をやりくりできていたわけではなかった。試行錯誤しつつ、豊かに暮らせる方法を見つけてきたという。

刺身はスーパーで買わず、魚屋さんでさばいてもらう。そのときに出る骨は捨てずにまるごと揚げてせんべいに

節約しない節約術

 食費や日用品、趣味などに使える金額は1か月で2万円程度。その中でやりくりする秘訣、それは「自炊をすること」。毎日の食事はもちろん、漬物や梅干しなども自分で作ってしまうそう。

「昨年末、添加物が入っていないキムチが食べたくて自作しました。市販で買うのと同じ金額でも、自作すれば5倍くらいの量が作れるんです。決して、節約しようと思って作ったわけではないのですが、結果的にそうなっていましたね」

自家製のキムチ

 市販の約5倍もの量ができあがったというキムチの材料費はなんとたったの600円。白菜1玉分のボリュームだというからこれはかなりお得だ。

 miさんのお金のやりくり術、それは買い物の仕方にもコツがあった。彼女の財布に入っている金額はいつも1000円ほどで、クレジットカードは持ち歩かないという。

「いつも必要最低限のお金しか持ちません。もちろん予定にはなかった食材を買いたくなったり、欲しい洋服などを見つけてしまったりすることはあります。

 ただそんなときは一度銀行に行かなければならない。そうすると、銀行に行ってまで欲しいものなのか? と冷静な判断ができるんです」

 この方法のおかげで衝動買いをしなくなったそうだが、それでも欲しいと思ったら、買うことを躊躇(ためら)わないのがmiさん流。

「自分が本当に欲しいと思ったものは、その気持ちを否定せずに買います。もし買った後に失敗だと思っても、自分を責めません。

 無理や我慢をしてストレスをためたり、できない自分を否定したりするほうがよくないと思っています。無理せず自分の心に従う、これが豊かに暮らし続けられる秘訣なのかもしれません」

〜miさんの1か月の収支(2022年1月)〜

●収入・・・・・・・・・約12万円
●支出
  家賃・・・・・・・・5万3330円
  通信費・・・・・・・1万2141円
  ガス・・・・・・・・・3493円
  水道・・・・・・・・・3768円
  電気・・・・・・・・・1646円
  食費・日用品等・・・1万9000円

合計         9万3378円

★余った2万円は貯金に回す!
 昨年の12月は年末で忙しかったため、普段よりも収入の多い月。miさんは家計簿をつけていないので、支出額はおおよそだという。収入が少ない月は貯金をしないこともあるそう。

ゴミを減らすことで節約につながった

 さらにもうひとつ、節約術の幅を広げているのが「ゼロウェイスト」という、ゴミをゼロにすることを目標とした活動をすることだ。

 例えば、ゴミはゴミ袋を使わずに何かのパッケージ袋などにまとめて出す。そうすることでゴミ袋を買う必要がなくなり、ゴミ袋代が浮くようになった。

 ほかにも、傷んだバスタオルは台所の手ふきに、さらに傷んだら食器洗い用に……と、最終的に掃除用雑巾になるまで使い切るようにしている。

使い古しのバスタオルは4つ切りにして、スポンジ代わりの食器洗い用に。おトクだしゴミも減らせる

 もともとはゴミを減らしたいと思って始めたことだが、今あるものを使えば新しいものを買う必要がなくなり、結果的に節約につながる。このように、miさんが行う節約術は、自分がしたいことや自分に合うものを探した結果、それが節約になっていた……というパターンばかりだという。

「私自身、向いてないな、合わないなと思ったことはやめてもいいと思っています。そして本当にやりたいことはお金がかかったとしても我慢しない。そうやって無理なく自分に向いているものを選んでいくことが、無理せずこの暮らしを続けていくコツではないでしょうか」

 朝から晩まで仕事詰め。もうそんな生活を離れてマイペースに生きていけたら─。現代社会でこそ増えた悩みを持つ人が、miさんのような生活を始めるとするならどうすればいいのだろうか?

「周りの人と比べないことですね。この人は◯万円で生活できてるのになんで自分はできないのか、と自分を責める必要はありません。自分に合った満足できるスタイルは必ず見つかります」

miさん流お金との付き合い方

(1)「値上げ」につられて買いだめはしない

→スーパーやドラッグストアではいつでも「安売り」を行っている。いつも買っている店の価格を定点観測して“本当に安いとき”を見計らって買う。

(2)「使う量」は適正か、常に見直す

→例えば洗濯用洗剤や柔軟剤、トイレットペーパー。なんとなく使っている日用品、消耗品の使用量に目を光らせてみるだけで、年間数千円のコスト減に。

(3)「お給料まであと〇日」とカウントしない

→お給料日を見張っていると、“お金がない”と思う回数が増えてしまう。「今これくらい残っているから、こういう買い物にしておこう」とお金をコントロールする気持ちが精神的なツラさを生む。

(4)「暖房を使わない暮らし」になれる

→暖房を使うと狭い部屋が乾燥して肌やのどの調子が悪くなる。厚着をしてカイロを貼って過ごすくらいでちょうどいい。“使わない”を前提にした暮らしに慣れていくことで、自分の健康や地球にもやさしい生き方に。

(5)“自分の出したゴミ”を数えてみる

→ゴミのカウントはペットボトルからスタートした。「どこに行くにも水筒を持ち歩いているつもりだったのに、1年目は50本も出していてびっくりしました」。ゴミの量をチェックしていると、無意識に何をどれだけ買っているかを見直せる。

PROFILE●miさん●ブログ「月収10万円 豊かな生活。」を運営する都内に住む30代の女性。月に100時間程度働き、月収10万円で豊かに暮らす生活をつづっている

(取材/オフィス三銃士)