左が自宅に置いてある「食費用の財布」。右は昨年、メルカリで買った新古品の「そのほか用の財布」

 5人に1人が年収200万円以下という時代に突入した。低年収でも実際、暮らしていけるのか?家計を整理してメリハリのあるお金の使い方をすれば年収200万円台でも無理なく生活することは可能だ。人気シニアブロガーのショコラさんに今ある収入で自分らしく、楽しく暮らす秘訣を聞いた。

働き方を変えつつ人生の後半戦へ

 今年66歳を迎えた人気ブロガーの「ショコラ」さんも、年収200万円台で人生を豊かに暮らすひとり。無理なく働き、月12万円でおしゃれも部屋づくりも楽しむ充実のシニアライフを送っている。ブログが人気を博し、書籍も多数出しているが、毎月の生活費は変わらない。

「現在の主な月収は、年金の12万円と週4日のパートで得る8万円。パートの収入は予備費として貯金しています」(ショコラさん、以下同)

 42歳で夫と別居してひとり暮らしを始めたショコラさんは「ひとりで生きていくために」パート勤務から転職活動を経て正社員になる。

 さらに友人から老後のためにとすすめられ、46歳でマンションを購入。給料の半分とボーナス、離婚の慰謝料を繰り上げ返済に充てて、わずか10年でローンを完済した。

「住む場所があることは何より老後の安心材料になりましたね。仕事とやりくりを頑張ったかいがありました」

「年金定期便」は確認していたものの、そのころから年金額やこれから必要な収入額を考えるようになったと話す。

「離婚する前のパートで社会保険に加入でき、年金額を増やせたことは今思えば本当にラッキーでした。正社員の仕事は体調不良もあって57歳で退職。退職金は半減しましたが今後の年金収入を確認し、支給までパートで働けば十分何とかなると思えたんです」

 その時々で必要な収入額を見極めて仕事を選び、人生設計を計画的に準備してきた。

「もちろんすべてが計画的ではありません。でも息子たちに頼りたくないし、できる限り自分のことは自分でしたい。前向きな節約だと思うと、お金の管理もゲーム感覚で楽しめるんです」

 週5日だったパートを63歳以降は週4日に。65歳で辞めるつもりだったが、任せられる仕事も増えてきてやりがいを感じており、しばらくは続けることにしている。ただ、今は勤務時間を10時から16時に減らしてもらった。

「休みの水曜日はだいたい施設にいる母の面会に行ったり、通院といった自分のメンテナンス日に。土曜日は小旅行などの外出、日曜日は自宅で過ごすことが多いですね」

無駄遣いをなくすお金の管理術

 24歳から40年近く家計簿をつけてきたショコラさん。毎月のお金の流れや自分のお金の使い方のクセがわかるようになったので、今はつけていない。だいたい毎月の支出を12万円以内に収めている。

 毎月の収入から固定費分を引き落としの口座に残し、生活費は現金で管理し、お金の流れをシンプルに。

毎月初日に『食費用の財布』に2万円、美容院や日用品などの生活雑費に使う『そのほか用の財布』に4万円入れています。食費用の財布は家に置いておき、持ち歩くのはそのほか用のほう。スーパーで買い物をしたら支払い金額を食費用の財布からそのほか用の財布に移します。レシートはそこで捨てますね」

 月半ばに残金を見て、使いすぎていればその後の出費を抑え、自分なりに調整。

「私の場合、財布を2つにしたほうがお金の流れが把握しやすいんです。現金だと残りが一目瞭然で、無意識に減らしたくないと思うのもいいのかも。家計簿をつけなくてもだいたい毎月余るので、その分は翌月に繰り越します」

 いつの間にかお金がなくなるといった事態を防ぐため、ダイソーで買ったおこづかい帳には服やバッグの値段や交際費などを、日付とともにざっくりとメモする。

「ネットショッピングでクレジットカードを使ったらすぐに財布から現金を抜きます。ある程度まとまったら引き落とし口座へ。お金の流れは常に把握するようにします」

 季節によって流動的なのが水道光熱費。今も時々、月にいくらかかったかブログで公開しており、年間で上下するが、予算どおり1万円以下に収まるようにしている。

「今の家はバスタブが大きめなので普段はシャワーだけに。湯を張るのは冬の寒い日やゆっくりできるときのごほうびタイムにしています」

フリマアプリ活用でおしゃれを最大限に

 おしゃれが大好きなショコラさんは、ネットオークションを上手に活用。素材を意識した長く使える良いものを低価格で手に入れている。ものを買うときにも独自のルールがある。ひとつ目は「欲しいものリスト」を作成し、衝動買いを防ぐこと。

自炊がメインなので器はお気に入りの北欧食器に。簡単な料理やレトルトでも器次第でおいしく見えるもの

欲しいものを書くと客観的になるんです。日にちを置いてやっぱり欲しいと思ったら、まずメルカリやヤフオクで検索して相場をチェック。『未使用』の新古品も案外多いので狙い目です。服は生活費で買いますが、たまに買うすてきなバッグやピアスは予備費から出しています」

 購入前には必ず出品者の人となりも確認。基本的に業者ではなく個人の出品者から購入したほうが状態がいいそう。

「本当に欲しいものにお金を使うと満足度が高い。ふだんは質素に暮らしているので私なりに思い切って使います」

 それは100円ショップでも同じ。事前に必要なものをメモしてから買いに行く。

100円ショップで購入したもの。特に調味料はサイズ感が秀逸

「そうじゃないとつい余計な便利グッズを買ってしまうので(笑)。スケジュール帳や卓上カレンダー、ふきん、キッチンスポンジの消耗品はいつも100円ショップです。

 最近便利だなと思っているのが、ひと回り小ぶりな調味料。ひとり暮らしの私には量がちょうどいいんです。調理グッズも100円ショップが多いですね。その反面、食器は厳選して北欧の器を少しずつ買い足しています」

ものを増やさず欲しいものを手に入れる

人気シニアブロガーのショコラさん

 もうひとつのルールは、常に好きなものだけを手元に置くこと。不用品はメルカリで出品し、ものを増やさず欲しいものを手に入れる工夫にも抜かりない。

 節約のために好きなものを我慢するのではなく、細かく記録・計算し、計画的に実践。やみくもに節約をしたり無理やり物欲を抑えるのではない。現実的で自分に合った方法を駆使し、身の丈に合った豊かさを手に入れていた。

「コロナが落ち着いたら、今まで貯めた予備費を使って人生初のひとり旅に行きたいと思っています」

 先の見えない今の時代、頼りになるのはあやふやな情報ではない。自分と向き合うことで必要なものと不必要なものを見極め、身軽に小さく暮らすこと─それがショコラさん流、確実な豊かさなのだ。

ショコラさんの毎月の支出表(すべて目安額)

マンション管理費・税金など……30,000円
食費……20,000円
光熱費……9,000円
通信費……9,000円※サブスク、端末代含む
日用品費……4,000円
趣味・娯楽費……10,000円
医療費……5,000円
美容費……6,000円
保険料……5,800円
被服費……5,000円

合計……103,800円

お話を伺ったのは……

ショコラさん

人気シニアブロガー。40代で離婚を経験し、パート主婦から営業ウーマンとなり57歳で退職。現在はパート勤務。近著に『60代ひとり暮らし 軽やかな毎日』(宝島社)。


〈取材・文/オフィス三銃士〉