「懸賞を始めたのはおよそ35年前。景気低迷で当選品が縮小した時期もありましたが、コロナ禍明けの今、再び懸賞界が盛り上がっていると感じます」
“懸賞界のレジェンド”ガバちゃん
そう話すのは、ガバちゃんの愛称で知られる“懸賞界のレジェンド”長場典子さん。初めて応募したのは、会社員時代にたまたま目にした女性誌の読者懸賞だった。
「気軽に応募したら、現金5000円と『ウェッジウッド』の記念プレート(1万2000円相当)が立て続けに当選して。“懸賞を利用すればマンションの頭金が貯められるかも!”と浮かれました(笑)」(長場さん、以下同)
目をつけたのは、ラジオ懸賞。通勤中にラジオを聴き、昼休みに応募はがきを書くことを続けた。
「当時はバブル期真っただ中。当選品に海外旅行が頻発していましたし、現金100万円もザラ! ラジオでも毎日“1万円が当たる”懸賞をやっていました。でも、時代なのか手間をかけて懸賞に応募する人は少なかったんです」
10枚応募で10枚すべて当選ということも多く“応募すれば当たると思っていた(笑)”と振り返る。当時の当選総額は年間約100万円。当選した現金や金券、商品で生活費を浮かし、約10年でマンションの頭金1200万円を貯めることに成功した。
応募の経験を積む中、懸賞の当選率を上げるためのテクニックを磨こうと決意する出来事が起こる。
当落ははがきのひと言で変わると35年で実感!
「いつものようにラジオを聴いていたら、涙が出るほど感動的な話を聞くことができて。懸賞そっちのけで、その気持ちをしたためて投稿をしたんです。
すると、なぜかその放送回の懸賞の当選品である、当時5万円ほどのガスファンヒーターに当選。応募していないのに!
懸賞はがきはちゃんと読まれていて、コメントを書くなど熱意の差が当落に関わると気づきました」
さらに、1996年にはオープン懸賞(※)の当選金の上限が1000万円に上がり(現在は上限なし)、懸賞への注目度が上昇。“懸賞達人”としてメディアで紹介をされ、雑誌と夕刊紙で連載を持つまでに。※商品やサービスの購入を条件とせず、誰でも自由に応募できる懸賞
今では当たり前となった応募時のコメントや“はがきデコ”のワザも惜しみなく紹介しつつ、自身もよりテクニックを極めて当選を重ね、ついには総額4000万円を超えた。
順風満帆の懸賞ライフに暗雲が垂れ込めたのは2008年のリーマン・ショック時に日経平均株価が1万円を切ったころ。
「当選品が一気に縮小しました。現金1万円が1000円になったり、ラジオなどは番組のステッカーになったり。逆に明治の『R-1』などヒット商品を出した企業の当選品は豪華に。懸賞は経済とリンクするんだと実感しました」
では、現在の懸賞界は? コロナ禍で落ち込んでいた経済が回復傾向となり、活況を取り戻していると語る。
「現金は1000円~1万円に。5万円というものも増えてきました。クオカードなどの金券も500円から2000円が主流になっています。星野リゾートやリッチなグランピング旅行の当選品も多い印象です。
日本の株式市場は33年ぶりに最高値を更新しましたし、この景気が持続すれば“懸賞界に再びバブル期が!?”と期待しています(笑)。SNSで手軽に応募できる時代ですから、応募しないともったいないです!」
この夏狙い目の懸賞は?
1. 子どもと大人がセットのイベント系
コロナ禍が明け、旅行&イベントのキャンペーンが爆増中。「大人と子どもが一緒に参加する当選品は小学生限定などの条件があり、応募数が少なくなりがちです。大人のみでも、催行が平日限定の旅行なら当たりやすい!」(長場さん、以下同)
2. 雑誌の定期購読や新聞
「高確率で当選を狙うなら雑誌懸賞。特に定期購読のみの雑誌の懸賞と、とじ込みはがきを使う懸賞はアツイです。歌舞伎などの鑑賞券が多い新聞懸賞は、往復はがきで応募するものに注目。ハズレてもかなりお得な割引券が返信されることが多いです」
3. SNSで「その場で当たる」懸賞
SNSのフォローなどで応募でき、すぐに当落がわかる懸賞は「SNS上での当選報告投稿を増やしたい企業側の心理があるので、応募開始直後がおすすめ。“当選の7割が応募期間前半の応募だった”と実証をした達人もいます!」。
4. 野菜などの食材&アルコール懸賞
「ハムやヨーグルトなどの加工食品より、野菜やお肉などの食材やアルコール、とりわけワインなどが、ライバルが少なめです」
包装袋やパックなどに懸賞情報や応募シールが付いていることもあるので売り場でチェックを。
35年の懸賞生活&達人500人の取材から導いた当てコツ
1.ブームに逆行する
「今やコメントやデコは懸賞の常識。多くの人が実践しているので、あえてしないほうが目立ちます。中でも専用はがきの場合、コメントもデコも一切しないという達人は多いです。ブームに逆行するのも選ばれるテクです」
2. 切手や絵はがきに熱意を込める
「当選品や主催企業とリンクする記念切手を使い、懸賞への熱量をアピールしています」。雪だるまの切手と雪景色の絵はがきでブランドもののブーツを引き当てたことも。「果物や和菓子など、使えそうな切手は普段から集めています」
3. 懸賞ごとのベストタイミングに応募する
「“応募は早めに”が基本ですが、ハッシュタグを付けて写真投稿などをするSNS懸賞は締め切りギリギリに。年間を通じて収集できる応募マーク等での応募で、複数回締め切りがある懸賞は、1回目の締め切りを避けるほうが当選率は上がります」
4. 主催者にハマるコメントを入れる
「コメントを書く場合は、読む(当選者を選ぶ)相手が楽しめるような内容を心がけることが大事」
“〇月〇日のホームパーティーで、御社の〇〇をみんなで豪華に楽しみたいです”など、具体的なアピールも主催者の心をつかむ。
5. 対象商品の購買層を推測して応募方法を変える
最近は、応募方法を選べる懸賞が増加。「発泡酒とビールなら、ビールのほうが購買年齢層が高いと推測されるので、あえて発泡酒ははがき、ビールはSNSを選んで応募をします」。そもそも購買層の年齢が高い商品の懸賞のほうが応募数は少なくなりがち。
(取材・文/河端直子)