「小さいころから見ていた歴史ある番組なのでプレッシャーも感じていますが、もちろんありがたいお話ですし、高校野球という分野は自信を持って向き合える部分もあると思います」
斎藤佑樹、『熱闘甲子園』でキャスターに
今年も、夏の全国高校野球選手権大会が開幕。そのダイジェスト番組『熱闘甲子園』にキャスターとして新加入した斎藤佑樹(35)が語る。
「選手のみなさんの緊張に比べたら、僕の役割は小さいかもしれません。でも、彼らの躍動や輝きを伝える人間として、その先の人生で“あの時があってよかった”と少しでも思ってもらえるように取材したい。真っ先にそう考えました。やっぱり僕は高校3年生のときの、あのストーリーのおかげで今があると実感していますし」
甲子園史に残る優勝投手である斎藤。'06年夏、駒大苫小牧の田中将大と決勝で投げ合うが延長15回でも決着がつかず、翌日に再試合。球児は汗と泥にまみれるのが当然だった中、マウンドで尻ポケットからタオルハンカチを取り出して汗を拭く。その斬新な姿から“ハンカチ王子”と呼ばれた。早稲田実業高校から早稲田大学、そして日本ハムファイターズで投げ抜き、'21年に引退した。
「現役時代、“ここはもっと伝えてほしい”“そこはそっとしておいてほしい”という気持ちは多少なりともありました。そのように感じた気持ちを忘れずに、何より選手たちへのリスペクトを持ちながら取材し、お伝えしたいです。
まだ高校生の彼らの中には、メディアに取り上げられることが好きな選手も、そうでない選手もいると思いますし、みんな同じ感覚ではないから。僕ですか? 本当は正直苦手でした(笑)。でも、僕はメディアの方に取材していただいたおかげで、その当時もたくさんの学びがありました」
昔はキラキラしたものを想像していた
共演する先輩キャスターの古田敦也について尋ねると、
「古田さんの存在はとても心強いです。以前、ご一緒させていただいたときには“もっと出てきたらいいじゃん”と言ってくださって。大先輩にサポートをいただきながらですが」
大学時代、将来は“キャスターにも興味がある”と話したことも。今回、実際にキャスターに就任した気持ちは?
「あのころ、取材される側として見ていたキャスターの方と今とでは、まったく捉え方が違います。昔はキラキラしたものを想像していましたが、今は選手をどう引き立て、お伝えできるか。まだまだ力不足ですが、今年の甲子園で輝く球児の姿をたくさんの人に見ていただけたらうれしいです。
いろんなドラマがありますし、この夏をきっかけに彼らの今後の活躍にも注目していただけたら。そして“やっぱり野球は面白い”と思ってもらえたらうれしいです」
会社を設立し、取り組んでいること
引退後は『株式会社斎藤佑樹』を設立し、代表取締役に。“野球未来づくり”をビジョンに掲げ、WEBメディア『バーチャル高校野球』での取材など、高校野球の現場に普段から足を運んでいる。そして企業CMに出演するなど、活躍の幅を広げている。
「こんなにうまくいくとは思っていなかったというのが正直なところです。例えば、野球場をつくることも夢のひとつなんですが、立ち上げまであと少しという段階。いずれは日本各地や海外にも、自分が携わった“野球ができる場”をつくっていきたいと思っています」
そう話す斎藤は、すっかり実業家の顔をしている。
「いやいやいや(笑)。例えば、WBCで活躍したヌートバー選手と自分との縁を報じていただきましたが、あれは特別なことじゃなくて、野球にはそういう出会いがたくさんある。“野球がつないでくれたご縁”と僕はよく表現しているんですが、誰かが野球教室で教えた少年がメジャーで活躍するかもしれない。一緒に野球をした体験が、何年もたった後にその子の人生を豊かにしているような、そんな可能性を秘めていると思います。その場限りではない縁を、野球に携わる大人たちも大事にすることで、もっと大きなコミュニティーができる気がして。もちろんひとりではできないので、多くの人に協力をいただきながら取り組んでいます」
自分にしかできないことを──。斎藤の挑戦は終わらない。
身体を鍛え続けている理由
引退して2年弱。斎藤の身体はまるで、現役選手のような精悍さを保っていた。
「トレーニングは続けています。今日も、ひと汗流してきました! 筋肉量を落とさないように気をつけています。やっぱり練習や指導の現場を知らないと(掲げている)野球環境づくりも難しい。最新の育成環境などを学びたいので、いつ現場に呼ばれても行けるようにしておきたいと思っています」
ABCテレビ・テレビ朝日系で放送中(決勝戦まで)。月曜~金曜夜11時10分~11時40分、土曜・日曜夜11時~11時30分
番組ホームページ(https://www.asahi.co.jp/netto/)