宝塚大劇場正門

 “いじめ問題”で揺れるタカラヅカ。ニュースで見ながらも、歌劇団についての知識がなければわからないことも多いのでは?

 音楽学校の仕組み、芸名の決め方など、舞台専門誌の編集者が“乙女の園”のキーワードを解説。

歌劇団 基礎知識編

Q1:公演は1年中観劇できる?

A「花、月、雪、星、宙の5組が、それぞれ1年間に宝塚大劇場と東京宝塚劇場の専用劇場で2公演ずつ、1か月強の期間で公演を行っています。地方公演などもあり、映画館やネットでのライブ配信でも観劇することができます」(舞台専門誌編集者、以下同)

Q2:チケットはどうやって取る?

A「Webチケットサービスがあり、アカウント登録すればいつでも購入することができます。また、当日に残席があれば、劇場窓口で購入することができます。

 ただ、いちばんいいSS席は『宝塚友の会』会員のみ。この会に入っていれば、先行販売で購入もできます。平日のマチネ(昼公演)ならチケットも余裕はありますが、人気の演目や初日、中日、楽(最終日)はチケット争奪戦になります」

Q3:生徒のファンクラブは存在する?

A「歌劇団が公認しているのは『宝塚友の会』だけで、生徒それぞれのファンクラブというのは公式にはありません。ただ、お気に入りの生徒を応援するという名目でファンたちが私設のファンクラブを作っています。歌劇団はこれを黙認しています。

 ファンクラブの幹部によっては、生徒の身の回りの世話まで担い、退団後はマネージャーのような働きをする人もいます」

Q4:生徒の“推し活”はどうやってする?

A「それぞれの私設ファンクラブに入らないと、生徒に近づくのは難しいです。ファンクラブに入るには、お目当ての生徒にファンレターで入会希望を伝えると、ファンクラブのスタッフに届きます。

 あとは公演前に劇場でチケットをさばいているスタッフに、直接お願いするかですね」

Q5:ファンミーティングのようなイベントはある?

A「私設ファンクラブに入っていると『お茶会』というイベントに優先して参加できるようになります。これは生徒を囲んでのトークイベントみたいなものです。費用は生徒にもよりますが、1回5000~8000円くらい。

 あとイベントではありませんが、劇場前での入り待ち・出待ちに参加できます。ファンクラブが仕切っていて、劇場の楽屋口に整然と並んでいるファンを見たことがある人もいるのでは?」

Q6:オフィシャルグッズはどこで買える?

A「劇場の中にある『キャトルレーヴ』というショップか、そこが運営しているネットショップになります。各組のトレードカラーのオペラグラスや、文房具などがあります。また、トップスター監修のグッズもあります」

ベルサイユのばら像

宝塚音楽学校編

Q7:音楽学校の学費は?

A「入学時に、入学金20万円、教育施設費25万円、雑費3万円を納付。授業料は月額5万円になります。自宅から通学できない生徒は、『すみれ寮』に入寮しますので、別途月額1万5000円がかかります。

 そのほか、制服や式服用の緑の袴などを入学時に購入するので、これが約16万円ほどになりますね」

Q8:受験の資格は?

A「14歳から18歳で、受験時に中学卒業、もしくは高校卒業または高校在学中の人です。受験のチャンスは4年間あります」

スポットライトを浴びて大階段を下りる夢を叶えるため、音楽学校を目指す(写真は宝塚音楽学校HPより)

Q9:募集人数、倍率、受験科目は?

A「募集は年1回、約40人。試験科目は、1次が面接、2次が面接と歌唱、舞踊。最終が面接と健康診断になります。筆記試験はありません。

 実は、'08年までは1次に声楽とバレエがありましたが、試験ハードルを'09年から下げて今の科目になりました。昨年の倍率は15.3倍。最高倍率は'94年度の82期生のときで、48.2倍でした」

Q10:受験するためには何が必要?

A「'09年以降は試験のハードルが下がったとはいえ、毎年1000人くらいが受験します。歌唱と舞踊のレッスンを、音楽学校受験スクールなどで受けている子は多いですね」

Q11:学校では何を勉強する?

A「合唱や声楽、日本舞踊、モダンダンスなど、宝塚の舞台で必要なものを2年間学びます。音楽学校は卒業しても高校卒業の資格は取れません。ただ、'03年から希望者は高校卒業単位修得授業を受けることができ、高校卒業資格を取れるようになりました」

Q12:生徒は寮に入らなければならない?

A「自宅から通えるのであれば、入寮する必要はありません。'15年に建て替えられた『すみれ寮』は2名で一室を使っています。歌劇団に入団してからも、この寮に残ることはできます」

Q13:音楽学校を卒業したら、全員舞台デビューできる?

A「全員が舞台デビューできます。逆に、音楽学校を卒業しないと歌劇団の舞台に立つことはできません。少数ですが入団してもついていけないと自ら判断し、卒業後に入団しない人もいます」

タカラジェンヌ編

Q14:芸名は誰が決める? NGの名前は?

A「芸名は自分で希望の名前を、音楽学校の本科(2年生)の夏休みの宿題として音楽学校に3つ、提出します。

 その中から過去に同じ名前がないか、名字が現役の生徒とかぶらないかなどをチェックされます。本名の名字を使うことはNGで、下の名前はOKです」

Q15:男役、娘役はどう決める?

A「学校のカリキュラムが、日舞なら男舞と女舞で違いますので、音楽学校の入学時に、自分で決めることができます。

 しかし、身長が低い、声の質や音域の関係などで男役ではなく娘役をすすめられることもあります。入団してからも、途中で男役から娘役に転向する生徒もいます

スポットライトを浴びて大階段を下りる夢を叶えるため、音楽学校を目指す(写真は宝塚音楽学校HPより)

Q16:そもそも、男性は入団できない?

A「実は、昔は『男子部』というものがありました。1919年、8人の男性が入学しましたが、10か月後に解散。その後1945年に5人、翌年に3人、翌々年に5人が入学。

 しかし、女性劇団員やファンからの猛反対を受けて、公演には出演できず、陰コーラスで参加しただけになりました。この実話をもとにして'07年に『宝塚BOYS』という舞台が上演されました」

Q17:生徒たちの組分けはいつ決まる?

A「音楽学校を卒業し、歌劇団に入った新人たちは、初舞台でロケット(ラインダンス)を全員で披露します。その公演の後、各組に配属が決まるのですが、個人の希望は出せません」

Q18:在団中は恋愛禁止?

A「恋愛についてはまったく規制がなく、本人たちの自由です。公演で東京に来ているジェンヌたちは、食事会、いわゆる“合コン”もしています(笑)。

 そこで結婚相手を見つけたジェンヌも多いですね。ただ結婚は在団中にできません。退団してからになります」

Q19:ジェンヌたちの給料はどうなっている?

A「研5(入団5年目)までは阪急電鉄の社員として、固定給が支払われます。金額は普通の会社員と同じくらいですね。手取りで15万~16万円くらい。

 そして6年目からは劇団と直接、タレント契約を結びます。ここでジェンヌの番手などによって、額が変わってきます。額については公表されていませんが、トップスターで年俸1000万円以上になるといわれています。

 一般的なジェンヌだと、平均で300万~500万円くらいといわれていますね」

Q20:組ごとの違いはある?

A「各組には特色があり、よくいわれるのがダンスの花組、ミュージカルの月組、和物(日本物)の雪組、ダイナミックな星組、コーラス・アンサンブルの宙組、といったものです。

 この5組のほかに、歌や踊りのエキスパートが集められた、専科というものがあります。こちらは各組の公演を“強化”するために派遣されます」

Q21:トップはどうやって任命される?

A「トップスターは各組に1人ずついる、いわば組の“顔”です。男役、娘役共にトップはいますが、トップスターというと男役のトップを指します。

 新人公演で主演するなど条件はいろいろといわれますが、劇団からすれば、チケットを多くさばける生徒をいちばん推していると思います」

Q22:組長とトップ、どう違う?

A「組長とは、学校でいうところの学級委員長のようなものです。基本的には在団期間の長い生徒が選ばれます。なので、トップと組長はまったく別物です」

Q23:劇団にはいつまでいられる?

A「定年が60歳と決められています。ただ、劇団理事を兼任している生徒は、定年を延長することができます。ちなみに春日野八千代さんは、'12年に96歳で亡くなるまで現役を貫きました」

Q24:タニマチのようなパトロンはいる?

A「各公演で劇団から生徒に割り振られたチケットを、まとめて買い取るような企業が“太い客”としてついている生徒もいます。

 こういうケースはトップなど一部の生徒で、あとは私設ファンクラブのスタッフがチケットをさばいたり、公演DVDの販売ノルマをこなしたりして支えている場合もあります」

Q25:組によってファンが多いとか少ないというのはある?

A「そのときのトップによっても、組の人気は変わっていきます。例えば、ずっと同じ組で頑張ってきて順当にトップになる生徒と、違う組から移ってきてトップになる生徒とでは、ファン心理として複雑ですよね。

 迎え入れた組のファンからすれば“よそ者”になるし、出ていった組のファンからすれば“かすめ取られた”となりますから(笑)」

Q26:今、いちばん人気のあるトップスターは誰?

A「これは難しいです(笑)。劇団が推すジェンヌと、ファンが推すジェンヌが違うケースも多々ありますから。強いて言うなら、5組すべてのトップが、宝塚歌劇を引っ張っているということでしょう」

阪急宝塚駅から宝塚大劇場を結ぶ『花のみち』。四季の花が楽しめる