「劇団と、パワハラを行った上級生が真実を認め、謝罪することを求めます」
悲痛な訴えである。9月に亡くなった宝塚歌劇団員のAさんの家族が、11月に行われた劇団幹部の会見に反論する形で意見書を提出した。
LINEのやりとりを公開
「劇団側は過重労働を認めたものの、パワハラはなかったと主張。それどころか“(パワハラの)証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい”と11月の会見で開き直っていたんです。それを受けて12月7日に遺族側の代理人弁護士が会見を開き、パワハラの詳しい経緯を説明。証拠となる故人の生々しいLINEのやりとりも公開しました」(スポーツ紙記者、以下同)
意見書には「自分たちの都合の良いように真実をすり替え、娘の尊厳をこれ以上傷つけるのはやめてください」という家族の言葉もあった。劇団側の不誠実な姿勢が、事態をさらに悪化させている。
「Aさんが所属していた宙組の東京公演は年内予定されていた全日程が中止に。理由は“劇団員が舞台に安心して立てる状態ではないため”と説明しています。12月5日の雪組公演でも、途中で幕が下ろされ、中断するという“事件”がありました。トップスターの彩風咲奈さんが過呼吸になってしまったことが理由だと報じられています」
12月1日には演出家の藤井大介氏が劇団理事を辞任。『週刊文春』の記事が原因のようだ。
「11月28日に花組の団員が今後に関する話し合いの場を設けたそう。終わった後に、なんと藤井さんが上級生たちと“酒盛り”を始めたというんです。“こんな時にお酒を飲むなんて!”と下級生が抗議。劇団側も厳正に対処せざるをえなかったのでしょう」
宙組に“いじめ文化”を根づかせたのが元トップスターの真風涼帆だと『週刊女性』は先週号で報じたが、組替え前にいた星組でも“暴君”だったという。
「真風さんは先輩にあたる当時のトップスターと一緒になって、相手役に厳しい“指導”を行っていたそうです。開演前に精神状態が限界に達した相手役が過呼吸になった時、真風さんは彼女を気遣うどころか、“早く(症状を)治めて。幕を開けないとお客さんに失礼”と言い放ったんだとか。星組は体育会の気質が強いといわれています。元星組の天彩峰里さん、芹香斗亜さんなどが組替えで移ってきたことで、宙組が変わってしまったのかもしれません……」(宝塚関係者、以下同)
“うちは難しいことはわからへん”
真風は2015年に宙組に移籍し、2017年にトップスターに。
「そのころから威圧感がすごかったようで、あるタカラジェンヌは本番直前に彼女の姿を見るや否や“失神”してしまったそうです。よほど真風さんという存在が怖かったんでしょうね」
真風が横暴になっていったのは、周りが助長した面もあったらしい。
「真風さんのトップスター時代に宙組の組長を務めていたのが寿つかささん。本来は組内の問題を解決する立場ですが、寿さんは“うちは難しいことはわからへん”と言って、パワハラや過重労働を見て見ぬフリ。宙組内での真風さんはどんどん“王様化”していったそうです」
今年6月に真風が退団し、代わりにトップスターに就任したのが芹香斗亜だが、同情の声も上がっている。
「一部ではパワハラの“主犯格”とされていますが、それはちょっとかわいそうな気もします。真風さんの長期政権下では、芹香さんも“指導”を受けていました。芹香さんは17年目でトップスターになった苦労人です。彼女は下級生に対して厳しいですが、真風さんほどの高圧的な態度はとっていないというのが劇団スタッフの印象です」
Aさんをヘアアイロンでヤケドさせたとされる天彩峰里も、かつては被害者だった。
「以前から、退団前の真風さんやほかの上級生から“指導”を受けて泣いていて。疲れた顔をするようになりました。もちろんAさんにしたとされる行為は許されないものですが、彼女も悪い“伝統”を受け継いでしまったのかも」
宙組の“いじめ文化”をつくった真風は、退団後にソロとして芸能活動を始めている。
「真風さんは退団後、新しく公式ファンクラブを立ち上げました。年会費は入会金と合わせて4000円からですが、年会費20万円の会員は、真風さんと旅行までできるそう。まずはファンクラブビジネスでちゃっかりお金を稼ぎたいようです」
退団したとはいえ、真風が宝塚の現状に無関係でいられるはずはない。後輩のためにアクションを起こすべきだという声が上がっているという。
「今の宙組の“風土”を築いたのは真風さんだと考えている宝塚関係者は多いんです。宙組生たちは、彼女がトップ娘役だった星風まどかさんを執拗に責め続け、宙組から追い出したのを間近で見ていました。それが当たり前のことだと感じるようになってしまったのでしょう。今や上級生たちは“何がパワハラで何が指導なのかもわかっていない”状況だと思います。もはやパワハラの概念が壊れてしまっているんです」
“宙組解体”の可能性
宝塚歌劇団に演出家・藤井大介氏が理事を辞任したことに関する事実確認と、今後宙組が解体される可能性などに関する質問状を送付すると、
「12月1日付で記載の者が理事を退任したことは事実です。退任理由につきましては、回答を差し控えさせていただきます。(宙組の解体について)現時点で、その予定はございません」
との回答を得た。悪循環を止めるためには、劇団がパワハラやいじめがあったことを認め、生まれ変わる道筋を示さなければならないはずだ。
「遺族側は、15のパワハラ行為があったことを指摘しました。今年2月にヘアアイロン事件が報じられた後、Aさんは真風さんを含む上級生4人から呼び出されて執拗に問い詰められたといいます。劇団幹部はそれを黙認し、遺族の訴えを無視した。当事者としての責任感があるとは到底思えません」(前出・スポーツ紙記者)
遺族の代理人弁護士は、「パワハラを認めて謝罪しない限り、本件は絶対に解決しない」と強調した。劇団は、事態が危機的な段階にあることを理解しているのだろうか。「宙組で起こった“いじめの連鎖”で劇団員が亡くなったんです。年内に予定されていた芹香さん主演のお披露目公演が中止になったことの意味は大きいと思います。劇団がこれまでのような対応を続けていれば、最悪の場合“宙組解体”の可能性もあるのではと囁かれています」(前出・宝塚関係者)
宝塚が“清く正しく美しく”あり続けるには、一度解体するぐらいの覚悟で再出発するほかないだろう。