会議中ぼーっとしていたところを上司に注意される、どこか頼りない若手社員。しかし新聞の電子版を使うようになったことで、瞬く間に“デキる男”に大変身―。
コミカルなストーリーで話題のCM『日経電子版“田中電子版”』。その“田中”役を演じているのが、ロックバンド『黒猫チェルシー』のボーカル・渡辺大知クンだ。
「成長を印象づけやすい入社4~5年目で、イマドキで、少しチカラの抜けた雰囲気があり、電子版に“なる前”と“なった後”できちんと人格を演じ分けられる人」(日本経済新聞社・広報グループ)
CM起用の理由を担当者はこう語る。実は渡辺クンは、バンドと並行して俳優としても活動。2009年に公開された初主演映画『色即ぜねれいしょん』では、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、その演技力には定評がある。
「高校時代からバンドと並行して演劇もしていたから、役者とミュージシャンをやることは僕にとって自然なこと」
高校在学中の2007年に地元・神戸でバンドを結成。卒業後、活動の拠点を東京に移して、 2009年にCDデビュー。昨年放送された『サイレント・プア』(NHK)では郷田光良役を好演。CMとまた違った印象を受けた人も多かったはずだ。
「デビュー当時は何もわからず演じていたので、役づくりも何もなかったです(笑い)。でも今は欲が出てきて。現場の空気を見て、自分なりに考えるようになりましたね。どんな嫌な役の設定でも、自分が見て嫌なヤツに感じるようには演じたくないんです。あと役柄を変にキャラづけしない。例えば『サイレント・プア』なら、引きこもり役っていうのはシチュエーションでわかると思うんですよ。だからもし引きこもりじゃなければ『郷田光良』という人はどんな人だったのかな? と思いながら演じています」
ドラマで主演を務める深田恭子とは、こんなやりとりがあったという。
「撮影で初めて深田さんに話しかけられたとき“みっちー(役名)って、田中?”って (笑い)。“すごいインパクトの強いCMだったよ~。ビックリした!”と言われました。深田さんが僕に対してどんな印象を持っているのか、聞いてみたいですね」
『サイレント・プア』はタイトルどおり、見えない貧しさを描いた作品。そこでお金に関する質問をすると、意外な答えが。
「大学の卒業制作で映画を撮って無一文になりましたね。その卒業制作のために4年間貯めていたんですけど、貯金がゼロになりました。それでも足りなくて、親にも借金したので無一文というかマイナスですね(笑い)。僕がボーカルを務める黒猫チェルシーの新曲『サニー』のミュージックビデオの監督も務めたので、よかったら見てください」
本業である黒猫チェルシーは、その迫力のあるパフォーマンスで成海璃子など有名人にもファンが多い。
「普段のままで出ても面白くないと思うので。無理をしているわけではないけど、自分の中にもいろんな部分があるので、ステージに立つときはいちばんヤバそうな部分を引き出しています。バンドをやるからにはカッコいいヤツになりたい。普段のまま出てもカッコよくないですから」
発売中のベストアルバム『Can Of freak Hits』には、渡辺クンも出演している映画『大人 ドロップ』の主題歌『サニー』、そして挿入歌にもなっている奥田民生の『息子』のカバーほか黒猫チェルシーの代表曲全19曲が収録されている。
「今回のベストアルバムは、ライブで聴いてほしいものを自分たちで選びました。なので、今の僕らの空気感などが伝わると思います。初めて聴く人たちには、黒猫チェルシーを聴く導入になればいいなと思って作りました。なので、このアルバムを聴いて気に入っていただければ、オリジナルアルバムも追って聴いてほしいですね。CMの印象とは全然違う印象を受けるとは思うんですけど、それが面白いなって。どれを見ても違う存在でありたいんです。“渡辺大知=こういう人”っていうイメージがつくのではなくて、“これ全部同一人物なの?”って思われたい。スターだなって思う人って、私生活が見えないじゃないですか。だから僕もそういうふうになりたいですね」