―2人とも北野作品への出演は初めて。オファーがあったときはどう感じた?
藤 うれしかった。仕事をしてみたい監督だったからね。
近藤 僕もうれしかった。興味あったから。とにかく撮影が短いの。いい加減に撮ってるんじゃなくて、キチっとわかってるから、すぐ終わっちゃう。
藤 なんだか知らないけど、ジジイばかりを8人も集めてね。
近藤 若いイイ男も出てねえし、きれいな女も出てねえし、裸もねえし、どうするのって感じだろ? けど、安心感があるんだよ。
藤 現場はキャストも含めてみんな、北野作品に対する期待感がある。"北野さんだったら何かあるんだろう"っていうワクワク感。お祭りっぽい感じがね。
―出演俳優の平均年齢は72歳。こんなにも高齢者が一堂に会する現場ってないのでは?
藤 ないね。
近藤 そんな気持ち悪い現場、なぁ? 待ってる間、いろんな話するんだけど、結局は"年金もなぁ""耳が聞こえなくなってきた""いろいろ大変だよ"とか。もう言ってみりゃ、温泉入ってる年寄りみたいな会話だよ。
―2人の共演は、23年前の連ドラ『裏刑事』(テレビ朝日)以来。うれしかった?
藤 別にホモじゃないからね(笑い)。
近藤 今回、藤さんが"やめろよ"って俺を制止するシーンがあるんだけどさ。抵抗しても、全然動けないの 藤さんの体幹がしっかりしてるから。うれしくて、感動したよ。どういう生活してるんだろうな、この人は。
藤 清く正しくですよ(笑い)。
近藤 外国の俳優さんみたいだよね。こんなレトロなコート着て、帽子かぶって、ヒゲ生やしてさ。わりとしゃべらないし。カッコつけすぎてるんじゃないの?
藤 いやぁ……。
―では、今回の共演で、藤さんが近藤さんに感動したことは?
藤 近藤さんって独特で、昔からアイドル的な人気があるじゃないですか。年寄りにアイドルって言うのも失礼だけど"近藤正臣節"みたいな。モノマネもたくさんされてるしね。
近藤 ハハハ(笑い)。
藤 そういう不思議な、僕にはない俳優としての味、色気っていうのかな? 青春時代と同じ香りを漂わせているのは、ひとつの芸だと感心しましたよ。
ダンディーな2人に"壁ドン"をリクエスト
「男同士なんて気持ち悪いよ」と嫌がる近藤に対し、「やってみる?」と言ってくれた藤。
「俺はこっちに来りゃいいのかい?」「どうなの?」などの末、いただきました。調子に乗って"目線合わせてくださ~い"とさらにお願いすると、近藤は「だーかーらー、気持ち悪いよ」
―年を重ねてよかったことは?
藤 なんかある?
近藤 俺はたくさんあるよ。何かができなくなって嫌になるんじゃなくて、違うものが見えてきた。例えば、老眼鏡を買うとか、梅のつぼみに気づくとか。ジジくさいだろ? でも、ほんの小さな変化がとってもおもしろくなってきたの。こうなるならジジくさいのもいいもんだぜって思った。
藤 本当のことを言えば、切ないよ。若いときと今じゃ、桜の開花の意味が少し違ってきてる。そりゃ、当然ですよ。
近藤 来年見られるか、わからないからね。
藤 でも、俳優は年を取ったら、年を取ったなりの役柄がある。
近藤 本当にそう思いますよ。定年退職したら何もないっていう生活じゃないからね。
藤 まあ、2人とも恵まれてるジジイだよね。
近藤 うん。恵まれてるよ。