■目指したのは、何も隠さないこと
37歳で次男・美良生くんを出産したタレントの奥山佳恵さん。1年半後、美良生(みらい)くんがダウン症であることをブログで告白。昨年は、TBSの番組『私の何がイケないの?SP』に出演し、出産後から今に至るまでの思いを語り、大きな反響を呼んだ。
今回出版された『生きてるだけで100点満点!』は、奥山さんが書きためた育児日記をまとめたもの。当初は、自分と対話するように書き記したリアルな心の声を公表する予定は全くなかったという。
「育児日記はほとんど原文のままです。ついこの前まで、公の場に出すものではないと思っていました。でも、美良生くんが生まれて1年半後にブログで公表して……。その時点でだいぶ覚悟ができました。開き直ってというか、堂々と言えるようになったんですね。その後、テレビで公表する機会をいただいて、多くの人に知っていただいた。
で、今度は本。私は、強がりで今、楽しいよって言ってるんじゃないんです。過去の中で揺れ動く時間というのがあって、今の私がある。日々、葛藤があったうえでの1年半後の公表でした。その日々を包み隠さずお伝えすることで、みなさんに理解を深めていただけるとうれしい。そう思って育児日記を中心に本にしました。だから、包み隠さないということが、今回、一番この本で心がけたことなんです」
しかし、奥山さんが現在の心境に至るまでの道のりは容易ではなかった。
「最初は不安で、これからどうしようと思って絶望の中にいました。今思えば、わからないから不安だったんですね。見えない未来っていうのは、こんなに人を不安にさせるのかと思いました。先行きが見えない怖さで前に進めなかった。ところが、いざ生活が始まってみたら、怖いことなんか何も起こらなかった。少しずつ、美良生くんに親にしてもらってるというのもあると思うんですけど、最初に恐れおののいていたものなんか何もなかった、というのが実感です」
美良生くんとの生活は、「意外と普通」と語る奥山さん。それに対し、同じダウン症の子どもをもつ親御さんたちからは、「よくぞ言ってくれた!」と反響があったという。
「不安の根っこにあったのは、知らないってこと。だから、当時私が抱えていた不安を、少しでも世間から払拭(ふっしょく)できるといいなと思う。その結果、うちの子も生きやすい世の中になるんじゃないかと。“知らない”を減らせたらうれしいです」