昨年の5月27日だったかな。大阪の病院で人間ドックに入ったんです。脳ドックとMRIと、全身のCT。これを5月と11月の年2回、フリーになったころから続けてきました。
ところが、昨年は人間ドックのあと、院長が血相を変えて電話してきた。ちょうど『ひるおび!』の出演日だったから、なかなか私と連絡がつかない。そこで秘書に電話して、いきなり“あんたのところのボス、がんやで”と(笑い)。びっくりした秘書が“院長が、大谷ががんだと騒いでます”とメールしてきて、それで私も初めて知ったんです。自覚症状は全然なかった。
ただ、肝機能を表すγ-GTPという値がかなり上がっていたのは確かです。普通は100以下のところが数百ぐらい。でもそう言われたって、だいたいが酒飲みだからね。人間ドック自体、健康を気遣って入っていたわけじゃない。もとは新聞記者で、むちゃくちゃ酒を飲んでタバコも吸って、年じゅう休みなしの仕事漬け。そんな私を見かねた先代の院長が“こいつは無茶するから、ただの人間ドックじゃダメだ。年2回は入っておかないと”とすすめたのが最初。何事もなかったら“また半年は好きにできるわい”と、お墨つきをもらいに行っていた。
ただ今回は、CTで肝臓に影があるとわかった。大至急、大阪大学を紹介するから行ってくれと院長に言われて、昨年の7月半ばに入院。肝臓のなかに胆のうの管があるんだけど、そこにがんが見つかった。いったん退院して、8月25日に再び入院、28日に手術。今年3月まで抗がん剤の治療を続けていました。今では定期検診のほかには、特に何もしていません。
初期で見つかったから、手術で切って取り除くことができたわけですが、肝内胆管がんで私のようなケースはめったにないんだってね。ほとんどは進行してから初めてわかるそうなのでまあ、ラッキーでしたよ。
がんになって変わったことと言えば、入院した日以来、禁煙を続けていることぐらい。手術の2週間後には仕事復帰。ありがたいことに、代役を立てないで待っていてくれたから、一刻も早く戻らなければと思っていた。抗がん剤が終わった今では酒も普通に飲んでいます。それでも私の前でタバコを吸わないようにしたりと周りはいろいろ気を遣ってくれるけれど、こっちは50年間、ショートピースを吸いまくってきたんだ。いまさら副流煙でもないよ(笑い)。
人によっては、がんになったことで啓発活動として自分の体験を発信している人もいるけれど、基本的に私はあまりそういうことはしたくない。聞かれれば、ありのままを話しますが、積極的に自ら語ることはしません。
たまたま数か月、がんの治療をしていただけで今はもう治っている。そういうことでいいじゃないか。それぐらい、がんというのは日常的なもの。骨を折って入院していたのと同じレベルで語ればいいと思う。
再発や転移のリスクは、もちろん考えなければならない。それでも1度がんになった方は常に警戒態勢を取っているわけだから、いち早く敵を見つけられるし迎え撃つのも楽。怯える必要はないんじゃないか?
がんになったら“病気とうまく付き合いなさい”とよく言いますよね。私はそんなものと付き合ってどうするんだと思う。付き合って楽しい相手じゃないだろうに。検診があるときは付き合うから、ふだんはあっちに行ってろ。ただし生意気なことを言ったらドツクぞと、それぐらいの距離感でいたほうがいい。かえって元気に過ごせますよ。