“安くて早い”長らくファストフードの代表の座を占めていたハンバーガーが、このごろ少し様変わりしている。
1個数百円で食べられる従来型の店舗が若者寄りのイメージを脱せない中、1000円以上の高価格帯ハンバーガーをレストラン感覚で提供するハンバーガーショップが、大人たちの胃袋と懐を取り込もうと続々産声を上げている。
東京・JR吉祥寺駅南口。井の頭公園入り口近くにあった『フレッシュネスバーガー』が今秋、新業態『クラウンハウス』に生まれ変わった。
「ディナータイムのさらなる集客が課題ですが、客単価はフレッシュネスバーガー時代の約700円から約1500円になり、月平均の売り上げは4割ほど増えています」(同店広報)
客単価の高さが客層を作っている。
「20代後半から40代のお客さまが中心で、10代が抜け落ちている印象です。学生街ですので少し若い層も見込んでいましたが」(同店店長)
若い世代には敷居が高くなった。とにもかくにもバーガーを語るには店に行かねば始まらないということで、急ぎ足で吉祥寺に降り立った。
こげ茶を基調とするシックな外装。上部の棚にはワイングラスとお酒が並んでいる。照明を落とし、BGMに洋楽が流れる店内は、“明るくガヤガヤ”というファストフード店の印象とは大きく異なる。
店のイチオシバーガーは、店舗名を冠したクラウンバーガーで、お値段は税別1430円。既存店のフレッシュネスバーガー350円に比べれば、1000円以上高い。
「確かに安くはない金額ですが、バンズは日本酒の発酵酵母『酒種』を使った当店オリジナル仕様。米の甘みや風味が増した弾力のある仕上げになっています。パティはオーストラリア牛のサーロイン、肩バラ、モモ肉を使用。材料を店で手ごねして仕込み、注文を受けてからひとつひとつ焼き上げます。重量113グラムと厚みもあり“肉料理を食べている”という感覚になってもらえると思います」(同店長)
350円のバーガーのパティは50グラムと小ぶり。サーロインなど高級部位は使っておらずバンズも異なる。野菜はトマトとオニオンのみだが、クラウンバーガーはレタス、レッドチェダーチーズ、ベーコン、目玉焼きが加わり、総重量は400グラムを超える。
「最初は単純に“高い!”と思いました。ボリュームにびっくりして、頬張ると肉汁もたっぷり。付け合わせにポテトもあり1個でお腹いっぱいで、金額にもうなずけます」(20代の女性)
納得の笑顔を見せる一方、「数百円安かったらもっと気軽に通える」と注文をつけた。
「店内が広くて落ち着けるので、ママ友とケーキ&ドリンクで2時間くらい居座ってしまうことも。息子と来るときはバーガーをシェアして食べるので、2人で1000円強ならお得なくらいかな」(近所に住む40代の主婦)
フレッシュネスバーガーはもともと国産生野菜の使用をウリにするなどヘルシー志向。より素材にこだわる新店舗で顧客の要望をつかみながら3年で10店舗拡大を目指す。
「都内の、公園が近いところや少し特別感をもって使ってもらえそうな場所……駒沢や自由が丘などを視野に入れています」(同社広報)