虐待されている女子中学生を匿っている、という話に、母親は疑いを持たなかった。そう思わせるだけの理由は、山下容疑者の性格にあった。
「年齢が上の子も下の子も、相談事があるとよくうちに来たりしていました。息子は、誰かがからまれていたら、“そういうのはよくない”ってはっきり言っちゃうので、逆に、人から悪く言われることもありましたし、叩かれることもありました……。とにかく変な正義感が強いんです。
(女子中学生の虐待相談にも)深入りしすぎて、今回こういう事件になっちゃったのかもしれないですね」
逮捕された息子とはまだ、会っていない。
「面会はちょっと遠いので行けないですから、手紙で」
したためたという手紙の内容は、
「うちの子はもう成人です。ただ、相手の女の子は中学生って聞いたので、だからあなたの問題よりも、その女の子が今後、しっかり幸せに生きていってくれるにはどうしたらいいかをいちばんに考えなきゃいけないことじゃないの、と手紙を通して伝えました」
母親の思いを、遠く離れた留置場で、山下容疑者はどう受け止めているのか。
声を震わせる母親
「悪いことをしたら、きちんと反省すべきです。うちの子だけ助けてくださいなんて言うつもりはありません。私はきちんと責任は果たすべきだと思っていますし、とにかくまだ若いですので、今後しっかりそのことを、悪気がなかったにせよ(女子中学生を)助けようとしたにせよ、その方法が間違っていたのならそれはきちんと反省してほしいと思うし、私の願いは女の子が今後も幸せに生きていってくれることだけです」
と息子の立ち直りに、母親として期待を寄せる。息子がどんな悪いことをしても、せめて母親として寄り添ってあげたい。そんな親の情が見え隠れする。
中学生に売春をさせていたという許しがたい犯罪に手を染めてしまった息子に代わり、母親は声を震わせる。
「女の子は本当に虐待されていたらしいんですけど、でもそれから解放はさせられたらしいので、それだけが救いですね。ただ間違った方向に行ってしまったのなら、本当に申し訳ないと思います」