高プロの対象は2つ。まず、平均年収の3倍をかなり上回る労働者であること。具体的には年収1075万円以上を想定している。かつ、高度な専門職が対象で、アナリストや金融ディーラー、研究職が代表例。特別な人だけが対象のように思えてしまうが、
「年収は見込み額で、実際に支払われた額ではありません。1075万円以上の年収に相当する時間給なら非正社員にも高プロを適用できます」(竹信さん、以下同)
何をもって高度な専門職とするのか、基準は曖昧だ。
「法律に具体的な年収や職業が書かれるわけではなく、厚労省が省令を出して決定します。つまり、国会審議を通さないで年収要件を引き下げたり、職業の対象を広げたりできるということ」
森岡さんは、「当初は13業務に限られていた労働者派遣法が、改正されるたびに対象を押し広げられていったように、高プロも徐々に条件がゆるめられていく可能性は十分にあります」と、くぎを刺す。
現に’15年、当時の塩崎恭久厚労相は、高プロについて「小さく産んで大きく育てる」と発言している。乱用のおそれはぬぐえない。
24時間労働も可能に
悪用されるリスクもある。
「ブラック企業対策弁護団の佐々木亮弁護士がこんな試算を出しています。前述のとおり、高プロでは休みを取らせることは義務ではありません。しかし生身の人間ですから、疲れたら休みます。
それを悪用して、年収1075万円見込みとして高プロを適用させ、休憩や週1日の休みを取るたびに欠勤控除として、時給換算で差し引いていく。それを労基法のもとに計算し直すと、年収357万円になるというのです」(竹信さん、以下同)
これではブラック企業のやりたい放題になってしまう。歯止めはあるのだろうか?
「年104日、4週間で4日以上の休日を入れる決まりです。ただ週休ではないため、例えば月の初めに4日間の休みをとらせて残りを毎日24時間、連続で働かせることも理論上はできてしまいます」
加えて、健康確保措置が定められているものの、4つの項目から1つを選ぶ仕組み(最終ページのまとめ参照)。
「経営者はいちばん負担の軽い、健診の受診を選べばいいだけ。実質的な効果は望めません」