「オトコにモテたい」わけじゃない?

 同書は、美人ならではのお高さやブスの重苦しさを排除したちょうどいいブスが、いかにしてオトコを落とすかについて書いてあります。男性と盛り上がるためのお酒の飲み方、タクシーの運転手さんと積極的に話して雑談力を磨き、男性を部屋に招いた時にコンビニ素材でちゃちゃっとできるつまみを日ごろから練習しておくなど、テクニックとともにケイ嬢の努力体質と生真面目さを随所から感じることができます。

 しかし、読み進めているうちに、根本的な疑問がわいてきたのです。ケイ嬢は本当にオトコにモテたいのだろうか、と。

 ケイ嬢は、イケてる男性にばかりボディータッチする女性についてこう書いています。「こういうある種『差別的な行動』って、私的には絶対NGですね。自分が男性にこの手のことをやられたら、コンプレックスが刺激されて落ち込みますから、自分も男性にはそういう失礼な態度をとりたくないんです」「やるなら平等に!です。ブサイクだろうとなんだろうと、ボディータッチするなら全員に!」「誰かが気分が悪くなるようなことを恋愛テクニックとして利用するのは、もうやめませんか?」と差別廃絶の提言までしています。

 恋愛は集団の中の特定の人に好意を伝える行為なので、そもそもが差別のゲームなんだよと言いたいところですが、それはさておき、上記の発言から考えると、ケイ嬢はもしかしたら、男性の差別的な行動で傷ついたことがあるのかもしれません。そういう場合、「男性が怖くなって、男性から遠ざかる人」と「特別扱いされた女性を恨む人」がいて、ケイ嬢は後者なのではないかと思うのです。そう考えると「ちょうどいいブス」の定義も筋が通ることになります。

 ケイ嬢いわく、「ちょうどいいブス」とは「(男性が)酔ったらいける(と思う)女性のこと」だそうですが、なぜ遊び相手のようなポジションをわざわざ自分から希望するのでしょうか。それは「手を出しやすい存在」と男性にアピールすることで、口説かれたという“実績”を増やしたいからではないでしょうか。恋愛やセックスの経験数は多いほうが“いい女”であると考える人はいて、女性同士のマウンティングに使われることはよくあります。だとすると、ケイ嬢は「オトコにモテたい」のではなく、「オンナに勝ちたい」タイプなのでしょう。