■2日目=12月19日(水)
参拝者すべてが取材に応じてくれるわけではない。およそ半数は取材拒否だ。絶対に言いたくない内容の祈りもあるのだろう。事実、狭い境内に掛けられている絵馬には、
〈〇〇さんが奥さんの××さんと離縁して、△△(自分)と結婚しますように〉
〈〇〇 私利私欲に溺れて卑しい男め おまえだけは絶対に許さない(中略)地獄の業火に焼かれて死ね!〉
と恐ろしいものも。
近所の店主によれば、
「夜中、人目を忍ぶように来て、藁人形を釘で打つ、おぞましい人までいる」
という。
12:45
「この半年で6回目ですね。まだ離婚は切り出していませんが、私にも子どもにも暴力を振るう夫と離婚したくて来ています。“別れられますように”と書きました」
と教えてくれたのは、東京・世田谷区の主婦・藤岡美和さん(仮名、48)だ。
「ふだんはおとなしい人なんですが、仕事のストレスで突然、キレるんです。息子も反撃できる年ごろですが、それも力で抑えつける。
言葉の暴力も。でも、いまは一人息子が大学受験のシーズンを控えており、影響が出るとまずいので離婚はできません。2月に市立大、3月に国立大の受験があって、4月に入学してから言い出そうと思っています。息子も別れたがっていますので……」
言葉に悲壮感があふれ、切実な感じがした。
13:25
東京・目黒区の自営業・土屋智子さん(仮名、47)は2度目の参拝だ。福岡県在住の友人と一緒だった。
土屋さんは、およそ半年前に婚約した。ところが、
「うちの両親は賛成してくれたのですが、相手方の両親と親族が猛反対でね。相手も自営業なんですが、相当にお金持ちなんですよ。興信所を使って私のことを調べて“この女は金目当てじゃないか”とか、“財産目的だ”などとひどいんですね。結婚の時期も延びていて、まるで小室圭さん状態ですよ(笑い)」
友人は「仕事運の悪さを切りたい」と話した。
14:33
「私は主人との離婚。娘は病気と縁を切るために、初めてここへ来たんです」
と東京・北区の介護士・森山みきさん(仮名、53)。娘の佐藤真代さん(仮名、31)は同区在住の専業主婦だ。
母親のみきさんは、
「主人は“オレが、オレが”という亭主関白タイプで、私が何を言っても受けつけないんですよ。束縛も強くて、私が仕事でほかの男性と会話をすると焼きもちを焼いて、仕事に支障をきたすんです。10年前にうつ病になり、1か月前から仕事を休んでいるんです。娘も離婚をバックアップしてくれています」
としんみりと語る。
娘の真代さんは、17歳のときからパニック障害で通院していた。
「糖尿病と甲状腺の橋本病もあって、今年7月に倒れてしまったんですよ。いまは薬を飲んでいるんですが、服用をやめて、子どもを授かれるようになりたい。そのためにも病気との縁を切りたい。ここは、『ポケモンGO』をやっていたら、よくこの場所が出てくるんで、なんだろうなと思って調べてわかったんです」
と話した。
きっかけは何にせよ、ひとりで祈るより、ふたりで祈るほうが心強い。