質問に答えた櫻井翔さん本人も、28日の「news zero」(日本テレビ系)で、「あの質問をいただいたおかげで、結果としてきちんとわれわれの思いの丈が温度を乗せて伝えることができた」と、むしろ感謝するように語っていました。
聡明な櫻井さんなら、「あの……」「まあ」と多少の迷いをにじませながら質問した記者の立場も理解していたのではないでしょうか。だからこそ記者を批判するより、見事なコメントを返した櫻井さんを称賛するほうが賢明なのです。
ジャーナリズムに欠けるワイドショー
特に擁護するつもりはないのですが、この記者は、それなりに礼を尽くしながら、メンバーの思いを掘り下げようとしていました。
社名と名前を告げた上で「お世話になっています」とあいさつし、「おうかがい」を立ててから、「多大な功績を残されてきて」とリスペクトを示し、さらに「『お疲れ様でした』という声もある一方で」と配慮を見せながら、『無責任じゃないか』という指摘“も”あると思うんです」と順序立てて言葉を続けたのです。
こうして冷静に見ると、「言葉を選びながら話していたけど、最後の『無責任』というフレーズのチョイスを間違えてしまった」という様子が理解できるのではないでしょうか。そこに猛批判を受けるほどの悪意は感じないのです。
しかし、ワイドショーやネットメディアが、「無責任」を強調した一部を切り取って報じたため、「リスペクトも配慮もまったくない無礼な記者」という印象がひとり歩きしてしまいました。
それでも、活動休止の悲しさを抱える嵐のファンが怒りをぶつけたくなるのは当然でしょう。ただ、ファンではない人が匿名で「許せない」と一個人を猛攻撃する様子には悲しさを感じてしまいます。
さらに、影響力のあるワイドショーの出演者が、すぐに特定されるであろう一個人をわざわざ批判したのは、「嵐とは付き合いがある」という私的感情が影響しているだけで、そこにジャーナリズムの精神はないのです。
当然のことながら、個人の感情とジャーナリズムは別物。この記者は人間性を疑われたとしても、仕事に向かう姿勢を批判される筋合いはないでしょう。ほんの少しではあるものの、他の記者たちよりも前向きだったとも言えるのです。