オリジナリティー追求がトレンド
「会葬者が多くない家族葬は、葬儀社と相談して比較的自由にアレンジできます。音楽が好きだった故人を歌や演奏で送り出したり、会場を設定できるケースもあります。戦後は葬儀場で行うことが一般的でしたが、故人が生前長く過ごしたということで自宅での葬儀に回帰していたり、思い出のレストランで行ったり。そういった家族葬は、読経と焼香だけではなく、パーティー風にアレンジするケースも多いですね。
最近では船上で行うなんてケースもあります。家族だけで荼毘(だび)に付したあと、近親者を集めて船上でお別れ会を催し、そのまま洋上散骨をするといった趣向です。また、なかにはボウリング場で執り行ったという話も聞きます。半日貸し切って通夜と葬儀を兼ねて行い、小さな祭壇の前でボウリングをしたのだとか」
こういった事例を踏まえると、ジャニーさんの家族葬は故人“らしさ”を追求した、近年の葬儀スタイルの潮流に乗ったものと見ていいかもしれない。
「故人だったらどうするか、どうしたら喜んでもらえるかを考えて作るのが、近年の葬儀のトレンド。これを異質と見る向きもあるでしょうが、もともと日本の葬儀は土着の文化などから少しずつ変わってきたものです。今でも地方などでやり方に大きな違いがあります。つまり、正解はないということです」
しめやかに営むのが一般的な葬儀だが、今回はみごとに華やか。会場にはタレントたちの名前が入った色とりどりのパネルが並び、従来の葬儀とは明らかに一線を画している。
「ジャニーさんの葬儀は、現代の葬儀スタイルの最先端ということだと思います。きっと出席された方々は、華やかな舞台に魅了されたことと思いますよ。そして今回の家族葬の報道を見て、“自分だったらこうしたい”とか“故人をこう送り出したい”と考える人が増えるのではないでしょうか。オーセンティックな葬儀業界に一石を投じたことは間違いないでしょう」
さすがは希代のプロデューサー。かつて日本に男性アイドルグループという新ジャンルを確立させた手腕が、ここでも発揮されたということかも。死してなおカルチャーに影響を与える偉大な大物の死に、心から哀悼の意を表したい。
<今回のセキララアナリスト>
吉州正行さん
1981年生まれ。禅僧・寺院副住職。元リクルートに勤務し、雑誌編集や広告制作に携わり、芸能関係のニュースにも明るい。雑誌やウェブメディアに執筆多数。また僧侶の視点から相続について考えることを奨励し、東京証券取引所のメディア『東証マネ部』で「現役僧侶が教える!『終活の資産運用』説法」を連載中。
<文/雛菊あんじ>