子どもを騒がせない“最低限度の努力”
子どもにはこの空間は退屈でしょうし遊びだすのが自然なこと、声のボリュームだっていわれないとわかりません。ここはしっかり大人が教えてあげてくれ。様子をうかがうと、私の前の席にはおじいちゃんと孫。その前の席には、どうやら小さな男の子2人だけで座っています。男の子2人はずっと後ろ向きで座席に立ち、背もたれから顔を出しては、後ろの席の女の子と大声で笑い合っています。
3人同時に、耳にキンとくる「きゃーあ!!きゃーーーーあ!!」と甲高い奇声を発しまくりーの、座席で飛び跳ねまくりーの、ゲラゲラ笑いながら通路走りまくりーの、ひじかけの蓋パッカンパッカン大きな音を立てて開け閉めしまくりーの、窓のシェードをシャッシャッカシャッシャッカ上げ下げしまくりーの、もうわけわからん行動のオンパレード。
そのすべてに奇声と叫び声が盛りだくさんのジャングル状態。私の爆音レッチリは何の役にも立たず、最終的にイヤホンをむしり取ったのでした。
「え?めちゃくちゃうるさい、どうしよう!」と、思わず中腰で車内を見回すと、あちこちで私と同じように、信じられないといった顔で立ち上がりこちらを凝視しているビジネスマンのみなさんが。よほどうるさかったのでしょう。トイレに行った帰りに立ち止まったまま睨んでいる方もいます。
みんなが心の中で思っていることはひとつ。「おいおい。親は何しとんねん。」
まず目に入ったのは、ギャーギャー騒ぐ子どもたちに笑顔でちょっかいをかけ笑い声を増幅させつつ、孫の写真を撮りまくっているおじいちゃん。おい。そして通路を挟んで座るおばあちゃんは、ニコニコしてサンドウィッチをひとつ持ちながら「ほらー!これ、サンドウィッチ!ほらー!これ、サンドウィッチ!」と、子どもに負けない大声でひたすら連呼しています。おおい。母親は?どこだ!? さぞかし鬼の形相かと思いきや、おばあちゃんの横、子どもから一番離れた窓際で涼しい顔してスマホ見とるではないか。おおおい、おい!
さすがにこれは、車掌さんに注意してもらいたい……そう思っていたら、車掌さんが慌ててやってきて小声で優しく注意しました。ほかの乗客が耐えきれず呼んだのでしょう。そこではじめて「ほら、静かに」と言い出すおじいちゃん。
母親も、やっと子どもたちのほうを見て首を振りました。これでやっと静かになるかと思いきや、またしばらくすると子どもたちが騒ぎ出し、そこから急に子どもに「静かにしなさい!」と怒り出す母親とおじいちゃん。一瞬、子どもたちもポカンとして静かになるが、すぐにまた騒ぎ出します。「こら! 静かにしなさいって言ってるでしょ! わかんない?」とブチ切れる母。
いやいや、違うやん。
密室で手ぶらの子どもに、ただ「静かにしなさい!」って言っても、退屈だし遊びたいし、意味わからんし、無理に決まってるやん!! だいたいこの家族、長距離移動するのに子どもが少しでも長く静かに過ごせるための事前準備をまったくしていない。子どもに静かにしてほしいのなら、さんざん騒いでから「静かにしなさい」って言うんじゃなく、騒ぐ前に防がないと。
まず「子どもを騒がせない準備をどれだけしてくるか」が大事やのに、丸腰で乗ってくるとはどういうこっちゃ。こういうのは、「子どもが騒いだときの周りの目が冷たいから子育てしにくい」とかとは別問題やからな!そんなこというのは、そっちも子どもを騒がせない最低限の努力をしてからやで!
そもそも、乗る前に子どもに教えてきたかい?「今から新幹線に乗るけど、寝てる人やお仕事してる人もいるから、静かにしようね。シーね、約束」と。小さい子でも、ちゃんと話をしてから乗ると全然違うよ。
子どもが静かに楽しめるものを何か用意してきたかい? 小さくても集中してできるものは、何かあるよ。紙と色鉛筆や簡単なパズル、これがダメならこれ、と飽きさせないように何個か目新しいものを用意してきたかいな? してきてないやろ!