変わらない生活を送る
現在は家族とともに穏やかな日常生活を送っている生稲さんだが、2011年に乳がんが発覚。手術をしたものの再発を繰り返し、これまでに計5回の手術と放射線治療を乗り越え、右胸の全摘と再建も経験した。闘病生活が長く続いたからこそ、「今は普通の生活を送ることを心がけている」と話す。
「病気を経験してわかったのは、“普通でいられることがいちばんの幸せなのだ”ということでした。だから今は、健康のために特別なことをするわけでもなく、以前と変わらない生活を送っています。
食事についても、食べたいと思ったらカップラーメンやファストフードだって食べます。担当医の先生が聞いたら叱られてしまうかもしれませんが、幸い今のところは問題なく過ごせているので、“普通”でいることを何より大事にしています」
乳がんを経験したことで、物事の考え方も大きく変わった。
「病気になると“ちゃんとした生活をしなければいけない”“こんなことに気をつけなければいけない”と考えがちですが、それではストレスがたまってしまう。
もともと私は物事をまじめに考えすぎる性格なので、乳がんを経験してからは、“○○しなければならない”と考えるのをやめてみたんです。自分を縛るのをやめて自由にすればいいと決めたら、とてもラクになりました」
最近は、国の『働き方改革実現会議』の民間議員としてがん治療と仕事の両立について提言を行ったり、厚生労働省の『がん対策推進企業アクション』のアドバイザリーボードに選ばれたりと、がんサバイバーの立場から意見や情報を発信する機会が増えた。
生稲さんは、自身の経験をもとに、啓蒙活動に力を入れていきたいと話す。
「世の中にはがんに対して偏見や恐怖心を持っている人がまだまだたくさんいます。ですから、乳がんを経験した私が今こうして元気に生きている姿を見せて、どんなに大変なことがあっても、いつか笑って話せる時が来るんだよと伝えたいです。
今も講演会などでお話しする機会はあるのですが、これからは子どもたちへのがん教育や、がん検診の受診率を高めるための企業への働きかけなどもやっていきたいですね。
私も50代になったので、人生の後半戦は自分の経験をみなさんに伝える活動の幅をもっと広げていけたらと思ってます」
《プロフィール》
いくいな・あきこ ◎1968年生まれ。東京都出身。'86年、おニャン子クラブのメンバーとして活動開始。おニャン子卒業後は、女優・タレントとして活躍。2011年、乳がん発覚。5度の手術を受ける。'15年に乳がんを公表