日本の“ガラパゴス化”
「毎年イギリスの教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』が、発表する『世界大学ランキング』において、国内トップの東京大学のランクは下降ぎみです。明治時代に制定された教育制度が、グローバル化に対応できていないことも一因です。このツイートには、『多様な進学先を選べる自由を持ちたい』という日本の学生たちの気持ちも表れています。海外の大学を志願するにあたり、新年度の時期が異なると不利になります。まさに高校生から、世界標準の入学時期について課題を突きつけられた形です」(村田さん、以下同)
その「世界大学ランキング」の最新版(2020年版)では、東京大学は36位。65位の京都大学とあわせ、日本から200位以内にランクインしたのは2校のみだ。
ちなみに、中国からは7校、韓国から6校、香港から5校がランクインし、アジアトップは中国の精華大学(23位)だった。
新学期を9月としていない国は日本だけではなく、韓国は3月、シンガポールは1月など、統一されていない。それでも、世界中から多くの優秀な人材が集まり、世界最高峰の大学が集中する欧米と同じ時期を新学期とすることは大きな意味がありそうだ。
「海外の大学に志願しやすくなり、ギャップイヤー(高校卒業から海外大学入学までの空白期間)を取る必要もなくなります。大学卒業後は、9月採用を行うグローバル企業への就職もスムーズになります。海外からの研究者や学生も日本の大学を選びやすくなるため、世界の優秀な人材を獲得できるというメリットもあります」
まさにいいことずくめとも思える『9月新学期制』。これまで政府内でもたびたび議題にのぼり、'12年には東京大学が、春入学を全面的に廃止して秋入学へ移行する計画を発表した。5年前後をめどに実現を目指していたが、発表から約8年がたった現在、留学生や帰国子女など一部の生徒を対象とした秋入学は実施しているものの、当初の方針であった全面移行は実現できていない。
「計画にあたり、英語のみで学位取得が可能な教養学部英語コース『PEAK』が設置されましたが、東京大学の国際化の改革は中途半端に終わった印象です」
日本の大学が海外と同じく9月を新学期とするなら、高校はもちろん、小・中学校も対応を迫られる。各種国家試験の時期や、4月一括採用とされている新卒者の雇用制度も見直しが必要となるだろう。
コロナウイルスによる休校騒動を利用した『9月新学期論』は、実はお隣の韓国でも持ち上がっている。実現すれば、日本の“ガラパゴス化”が一段と進むことは間違いない。
「世界標準の9月入学にすることは、“世界大受験”に巻き込まれることを意味します。デメリットとしては、受験生の競争率が高くなることや、あまり特徴のない大学にとっては、逆に学生の獲得が厳しくなることなどが考えられます」
実現には越えなければならない壁がいくつもありそうだが、村田さんは「世界で勝負をしてほしい」と続ける。