高齢者をラクにするドライブスルー弔問
「コロナの影響から、葬儀の現場でもソーシャルディスタンスや手洗い、うがいが当然となる中、安心して葬儀に参加してもらえるサービスを提供しようとドライブスルー弔問を始めました」
こう語るのは、青森県青森市にある葬儀社、リンク・モアで常務取締役を務める寺山明美さん。
弔問客が車で訪れると、写真のようにスタッフが抹香と香炉をのせたお盆を持ち、車窓に近づく。弔問客は乗車したまま、窓を開けた車内で焼香を行う仕組みだ。
ドライブスルー弔問のメリットは、3密回避のほかにもある。葬儀にかかる時間は通夜で約2時間から3時間、葬儀なら約1時間から1時間半が一般的。途中で退席可能とはいえ高齢者にはつらいものがあるが、ドライブスルー弔問なら負担を軽減できる。
「身体の具合で弔問をあきらめていた高齢者にとって、福音となっています。青森は高齢化が深刻なことに加えて、冬の積雪量も半端ではない。この先、コロナ禍が去ったとしても、ドライブスルー弔問は喜ばれる葬儀の形だと思います」(寺山さん)
ドライブスルー方式の葬送サービスを日本で最初に開設したのは、長野県上田市の葬祭場・上田南愛昇殿だ。運営元であるレクスト・アイの荻原政雄社長(当時)が、高齢の母親の介助経験から「高齢者や身体の不自由な人でも負担をかけず、気軽に葬儀に参列することができないか」と考え、2017年に導入した。
オープン当初は“車から弔問は不謹慎”との声も少なからずあったが、「実際にシステムが稼働してからは、批判は極端に減りました。現在は、ほとんどありません」(久保田哲雄・専務取締役)
新しい葬儀様式は3密回避の徹底を
コロナとの闘いは長期戦になるという見方が根強い。ワクチン実用化には時間がかかり第2波の到来も警戒される。
前出・碑文谷さんは、「移動がままならない状況があり、一方でテレビ会議アプリなどのソフトも充実してきていることから、オンライン葬儀などの需要は今後も高まっていく。当面は葬儀の会葬者も少人数が続くでしょう」と見通す。
葬儀場などへ実際に出向いて参列する場合は、どういった点に気をつければいいのだろうか?
「葬儀の場で集団感染が確認されたのは、3月22日~23日に営まれた愛媛県松山市内のケースだけ。葬儀だから特別に感染しやすいわけではありません。3密を避け、手洗いをして、アルコール消毒を欠かさない。こうした基本的な予防をきちんと行う。正しく恐れることが求められています」(碑文谷さん)