これからを期待された「亀と山P」

 では、完全にソロアーティストになった山下はというと、こちらもドラマや映画に主演。バラエティー番組のMCにも挑戦した。ただ、音楽でのソロ活動はいまひとつ上手くいっていない。ジャニーズはもともとグループでの売り方のほうが得意だし、山下とSMAPのマネージメントを手がけていた大物女性が事務所を辞めたことも痛手だったのではないだろうか。

 しかも、'14年には、こんなスキャンダルも。真夜中の東京・六本木で一般人の男女数名と口論になったのだ。相手側が撮影してきたことに腹を立て、携帯電話を取り上げ持ち去ったところ、器物損壊で被害届を出されてしまった。

 そのとき一緒にいたのは、赤西錦戸亮。赤西はその数か月前にジャニーズを退所していた。事務所にとっても、眉をひそめたくなるような事件だったわけだ。

 とまあ、負け知らずどころか、いろいろ苦戦もしているふたり。しかし、'17年には12年ぶりにユニットを組んだ。共演したドラマ『ボク、運命の人です。』(日本テレビ系)の主題歌『背中越しのチャンス』を『亀と山P』として歌ったのである。

 これはグループが充電期間中だった亀梨をソロの山下が盛り上げる構図にも見えたが、かつての名コンビを復活させることで、ふたり同時にイメージ回復させる狙いでもあったのだろう。実際「青春アミーゴ」の再現とまではいかなかったものの、そこそこ話題にはなった。

 それゆえ、今年、ジャニーズはこのユニットを本格的に活動させることを決定。アルバムを作り、ドームツアーを行なうことを発表した。山下が「一緒にいると少年に戻れる、そんな空間をつくってくれる唯一の友人」と語れば、亀梨も、

10代前半から同じ時間を過ごしてきた。積み上げてきたもの、気づいたら積み上がってきたものをお客さんと共有できるというのを、僕らも楽しみたい」(デイリースポーツ)

 と、やる気満々だったが――。コロナ禍により、発売延期や公演中止に追い込まれていた。

 そのうえ、今回の不祥事だ。ジャニーズ史上最強というべきキラーコンテンツの価値低下は、ふたりはもとより、事務所にとっても大誤算というほかない。

「野ブタ」から15年。グループ運に恵まれず、脇もやや甘いふたりにこそ、輝きを取り戻すための「プロデュース」が必要なようだ。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。