ロック解除に失敗してデータが消失!?
デジタル機器の中には重要な情報がぎっしり詰まっているが、そもそも「スマホやパソコンが開けず、中が見られない!」という遺族が多い。ロック解除のパスワードがわからず、思いあたる番号を適当に入力……とやりがちだが実はこれ、危険な行為。
デジタル機器のデータ復旧やパスワード解析を専門とする会社・デジタルソリューションの嘉藤哲平さんによると、
「機種や設定にもよりますが、10回間違えると自動的に初期化されてしまうことが。すると、すべてのデータが消えてしまいます」
こうなると、専門会社に解析を依頼しても、データを復元することは不可能。思い出の写真やメールの履歴など、きれいさっぱり消えてしまうのだ!
ならば、専門会社にパスワード解析を依頼すればいいのか……と思いがちだが、そんなにお手軽なものではない。まず費用。ロック解除のパスワード解析だけで数十万円、ときには100万円程度の費用がかかることも。作業期間も3か月から半年を要することが多い。しかもセキュリティーが堅牢なスマホは必ず解析が成功するとは限らない。
「デジタル遺品に関するご相談は増加傾向にありますが、費用などの問題から実際に解析を依頼される方は20%ほどです。事故などで突然死された方のご遺族で、どうしてもデータを見たいという場合が多いですね」(嘉藤さん)
さまざまな弊害が想定される「デジタル遺品」だが、実際に対策を取っている人は「ほぼいない」と伊勢田さんは言う。
「遺族に不要な負担をかけないためにも、最低限、各デジタル機器のログインパスワードは共有しておくべきです」(伊勢田さん)
紙に書き出し、財布や通帳など、万が一の場合に遺族が確認するであろう場所に保管しておこう。ひとり暮らしなら冷蔵庫に貼っておいても。これなら、1分でできるはず。たったそれだけでも、残された家族への恩恵は絶大!
「理想としては、金融取引の状況や課金されているものなどを棚卸ししておくこと。それぞれのIDやパスワードを紙にメモしておけば、残された人の負担は大幅に減るものです。ゼロからすべてを調べるのは相当な労力が必要ですからね」(伊勢田さん)
棚卸しの際には、「必ず対応してほしいもの」「できれば対応してほしいもの」「破棄していいもの」と3つに分類しておくといい。金融資産に関するものは「必ず対応してほしいもの」へ、SNSやブログなどの取り扱いは「できれば対応してほしいもの」、不要となった仕事の資料や趣味の情報は「破棄してほしいもの」といった具合に仕分けを。万が一は、いつ訪れるかわからない。逝く人も遺された人も、悔いが残らないよう、できる備えはぜひやっておきたい。