ママとパパは今、どこにいるのかな
ある日の三日月を見て、
「あのお月さま、お姉ちゃんの笑い顔に似てるね」
また、星がきれいに出ている日には、
「パパとママも、お姉ちゃんのところに行っちゃったんじゃないかな。うち、ひとりになっちゃうのかな……」
とつぶやくという。
4月14日に、母・安美さんのご遺体は発見されていたが、祖父母はその事実を海音ちゃんに伝えられずにいた。
「やっぱり、お姉ちゃんの火葬のときの思いを、2度と繰り返させたくないので。パパとママがいない、ということは半信半疑だと思うんです。まだ、いつか帰って来るのでは、っていう気持ちはあると思う。でも、私には聞けない。たまに、空を見上げて“こないかな……”っていってるときがあるんです」(隆子さん)
星を見たときのように、海音ちゃんは、遠回しにパパとママのいない寂しさを訴えることがある。
「ママは今、どこかなぁ。パパと一緒にいるのかな」
「ママのご飯が食べたいな。でも、あーちゃん(祖母の隆子さんのこと)のご飯もおいしいよ」
「あーちゃん、今日、お星さまがきれいだよ……」
だけど、そこで涙は一切見せず、むしろ笑顔で話すという。仙台を離れ、陸前高田に引っ越すときも、仲のよかった友達に電話し、
「うちね、陸前高田に引っ越すよ〜」
と、泣きもせず“早く行きたい”とケロッとしていた。
しかし、廉さんと隆子さんには、海音ちゃんには真実を伝えることができない。“パパとママのこと”が、脳裏から離れない。せめて、亡くなった息子夫婦と長女の花瑚ちゃんを、一緒に眠らせてあげたい。
「連休までに、何とか息子の遺体を見つけてあげたいと、ずっと思っていました。花瑚が見つかり、4月14日の2人の結婚10周年の日に、嫁の安美ちゃんが見つかった。でも、息子だけがまだね……。連休中に仙台に行って、安美ちゃんの遺骨を持って帰り、花瑚の隣にいさせてあげようと思っていたんです」
息子の発見を待ち続け、5月になった。すると、1日、仙台から1本の連絡が廉さん夫婦のもとに入った。
「ある遺体の所持品の中に、純の免許証や診察券が出てきた、っていうんです。間違いないだろう、って」(隆子さん)
隆子さんは海音ちゃんに、
「仙台に行こう」
と誘ってみると、
「なんで仙台に行くの? パパの捜索に行くの?」
という。
「ママのお迎えに行こうね。お姉ちゃんと一緒にいさせてあげよう」
当初、仙台には安美さんの遺骨を取りに行く予定になっていた。そこに入ってきた、純さん発見の一報。祖父母は海音ちゃんを連れて、すぐさま仙台に向かった。
「息子の遺体安置所には海音は置いていきました。私と弟が行ったのですが、もう50日も経過しているので、遺体の確認をするのは、とてもつらいと説明を受け、私は見ることができませんでした。結局、弟に写真で確認してもらったのですが、弟も号泣するくらいつらいもので……。私も、息子の免許証を見ただけで涙が止まりませんでした」(隆子さん)