“どうしても憎めない”の声も
なぜ、積み上げてきたものを台無しにしてまで卑劣な犯行に及んだのか。野本容疑者を後継指名した元市議の佐藤長助さん(85)は「まさに青天のへきれき」と口を開く。
「彼のことは学生時代から知っていて、事件が信じられなくって家内と泣きました。僕は父親のような気持ちでいたから。不器用でのろまっちょなところはあるけれども、不登校やいじめ問題などにも熱心で、ことさら家庭環境に恵まれない子どものことをよく考えていた。彼が市議会で質問に立つときはほぼ傍聴に行き、どんどん成長していく姿に感心していたんです」
選挙活動では毎朝交差点に立ち、信号で止まったときだけでも運転手に声が届くように演説を続けていたという。
「毎年正月には妻子を連れて挨拶にくるので子どもにはお年玉をあげてきた。一緒にゲートボールをしたときはあんまりうまくなかったな。マイペースというか鈍重で、負けてもヘラヘラしていましたよ。愛されキャラっていうんですかね。イベントのために地域の人と徹夜でそばを打ったり、夏祭りの子ども神輿(みこし)を炎天下で見守り続けたり。
彼のやったことはおぞましいし、許せないこと。紹介した後援者への裏切りです。でも、罪を憎んで人を憎まずというか、彼を憎むことができないんですよ。もうこの地には戻ってこられないでしょうが、“人生はやりなおしがきく”って言ってやりたいです」
と佐藤さん。
市議会事務局によると、逮捕の翌28日に弁護士を介して市議会議長あてに「一身上の都合」として辞職願を提出、受理された。退職金はなく、既に支給済みの5月分の議員報酬40万1000円から日割りした3日分の報酬を返金してもらうという。
遠藤英明議長は、
「市議会といたしましても、市民の皆様からの信用と信頼を失墜させた今回の事態を非常に重く受け止めている次第であります。ここで改めて議員一人一人が姿勢を正して、それぞれの立場と職責を再認識し、市議会を挙げて信頼回復に向けて取り組んでまいります」
などとするコメントを発表。会派の異なる市議からも「素晴らしい議員だったのに残念」という声が聞かれた。
一方、野本容疑者がPTA会長と学校評議員を務める地元小学校に辞任の有無を尋ねると、「お答えできない」(教頭)との回答だった。ただ、在校生への類似被害は「ないと確認している」(同)という。
昨年7月の市議会一般質問で、野本容疑者は自ら犯罪被害者への支援をテーマに取り上げ、次のように語っている。
《犯罪被害者は被害を受けた後の精神的なショックや後遺症など、長く苦しみが続き、悩んでいるケースがございます。(中略)公的な支援が強く求められておりまして……》
そう訴えた約2か月後には女児を盗撮したわけだから、言行不一致も甚だしい。
野本容疑者の自宅には、市内を駆けずり回った愛車の軽自動車が残されていた。そのリアガラスには【子育て世代の挑戦!!】と記した文字シールが貼られていたのを多くの市民が目撃しているが、なぜかシールは剥がされ文字の跡だけが残っていた。関係者のだれかがあまりに恥ずかしくて剥がしたのだろうか――。