●岩井志麻子特別寄稿「永遠の“朋ちゃん”」
朋ちゃんこと華原朋美は、確かに時代を象徴するスターで、間違いなく'90年代を代表する歌姫であったが、同時にお騒がせタレント枠でもビッグネームだ。
朋ちゃんとの対談が決まったとき、いろんな友人知人に自慢しまくると同時に、あなたにとっての華原朋美とはどんな存在か、と聞いて回った。
皆さんおしなべて朋ちゃんが大スターであることと、スキャンダラスな芸能人であることを並べて語る。どちらか片方だけを語る人が、少なくとも私の周りにはいないのだ。たぶんこれは、私の周りの人だけでなく、だいたいの日本国民に当てはまるのではないか。
それは朋ちゃんに限ってはスキャンダルやお騒がせのあれこれが、本人にとってもよきことであるはずはないものの、間違いなく魅力の一つにもなっているからだ。
あれは自殺未遂ではなく、もんじゃ焼きをしていてガス中毒になっただの、つい睡眠薬の量を間違えて繁華街を徘徊してしまっただの、それ自体は不運で危なっかしく可哀想な状況ではある。だが不謹慎を承知で、少し笑ってしまうのだ。
それは朋ちゃんを軽んじているのではなく、何があっても朋ちゃんは結局は大丈夫だという信頼と安心感があり、ピュアな子どもっぽさがあふれているからだ。もちろん御本人は大変に苦しみ、悩み、心身ともに壊れそうな時期を過ごし、でもそれらの苦難を乗り越えてきている。我々は、それをはらはらしながら見守ってきたではないか。
しかし天国と地獄をジェットコースターで行き来した女、にしては朋ちゃんはあまりにも明るい。どんな不幸なときにあっても、ダダ洩れの陽気さがある。
これは歌唱力と並ぶ天性のもので、その陽気さがスキャンダルと結びついたときの、朋ちゃんらしさ、としかいいようのないインパクトは数多のスキャンダル芸能人、凡百のお騒がせタレントがどう頑張っても適うもの、乗り越えられるものではない。
なんといっても朋ちゃんは、老若男女問わずみんなから今もって朋ちゃんと呼ばれているのだ。もはや朋ちゃんさん、朋ちゃん様、というように、朋ちゃん、で一つの名前になっている。こんな歌姫、他にはいない。みんなにとって朋ちゃんは、大スターであると同時に、いつまでも心配で可愛い妹なのだ。母となっても、みんな朋ちゃんと呼び続ける。
〈取材・文/木原みぎわ〉