同じ日に起きた押尾学の事件

 酒井は執行猶予つきの有罪判決を受け、事務所からは契約解除。いわば「勘当」の身となった。'13年には『さんまのまんま』(フジテレビ系)に出演するなど、芸能活動も再開させたが、本格的な活躍はできていない。

 そこには、この事件で彼女のイメージが激変したうえ、同じ日に起きたもうひとつの事件も関係している。当時俳優だった押尾学が愛人とともに違法薬物を使用し、死亡した愛人を置き去りにした事件だ。

 これだけの有名人ふたりが同時にクスリ絡みの事件を起こすというのも、何か怪談めいている。こうした一連の経緯によって、世間もメディアも今の彼女をどう扱っていいのか、何を求めていいのかがわからなくなっているわけだ。

 例えば、彼女は一昨年『THEカラオケ★バトル』(テレビ東京系)に出演。代表曲『碧いうさぎ』を歌った。アイドル時代の代名詞でもあるのりピー語で「がんばるピー」などとコメントさせられていたが、もうそんなイメージでもないだろうにと気の毒になった。

 最近は個人事務所を設立して、ユーチューバーとしてもデビュー。写真誌でセクシーグラビアに挑戦したが、こういう熟女路線も何か違う気がしてしまう。本人もそれを感じているのか、

「グラビアのお話をいただいたとき“私でいいんですか?”と不安でした。セクシーなものを望まれても、どこまでできるか……」

 と、コメント。正直なところ、自分の需要については疑心暗鬼なのではないか。

 筆者にとっては、35年前『モモコクラブ』(TBS系)の取材で彼女を見かけたときのアイドルっぽくない暗い表情が印象に残っている。そういうところが薄幸なヒロイン役などにはプラスに働いたのだろうが、事件後は似合う役が思いつかない。

 ただ、大ヒット作『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)くらいは、もっと普通に再放送されてもいいように思う。あの中の彼女なら今も求められている、はずだ。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)