腸内環境を整えるために炭水化物の摂取を
だとすると、善玉菌が喜んで食べている“主食”とは何なのか。
「それが、難消化性でんぷんと呼ばれている栄養成分です」
聞き慣れない言葉だが、難消化性でんぷんは、炭水化物に多く含まれているでんぷんの一種。実は画期的なでんぷんなのだという。
でんぷんはこれまで、胃や小腸で消化吸収され、私たちのエネルギーに変わるもの、つまり善玉菌のいる大腸までは届かないと考えられてきた。ところが近年の研究で、「難消化性」という言葉が示すとおり、胃や小腸では消化されず、大腸に至るものがあるとわかってきたのだ。
難消化性でんぷんを多く含むのはお米などの炭水化物。私たちが日常的に食べている主食である。水溶性食物繊維とは違い、毎日かなりの量が大腸に届くので、善玉菌はこれを主食として食べているという。
つまり、食事によって腸内環境を整えようと思ったら、善玉菌の主食である難消化性でんぷんを含んだ、炭水化物の摂取が不可欠ということになるのだ。
●善玉菌は炭水化物が大好き!
・不溶性食物繊維……硬くて苦手。基本的には食べない。
・水溶性食物繊維……好んで食べるが、食材に少量しか含まれていないのが難点。
・炭水化物……難消化性でんぷんは善玉菌の大好物。炭水化物に多く含まれているため、私たちも摂取しやすい。
炭水化物に含まれる難消化性でんぷんが善玉菌にとって主食ということは、逆に言うと、「私たちが炭水化物を食べないと善玉菌に大切なエサが届かないので、善玉菌が減って腸内環境が悪化している可能性もあります」と南田さんは続ける。
腸内環境が整うと、便通がよくなって肥満になりにくいなどのほか、免疫力アップなど、私たちの身体にとっていいことずくめなのは、近年よく言われているとおり。
「だからこそ、善玉菌の好物である炭水化物を抜くダイエットは健康面でおすすめしません」
また、炭水化物に含まれているでんぷんを多く食べると、大腸がんになりにくいという研究結果もある。大腸がんの人の便の中には短鎖脂肪酸が少ないといわれている。短鎖脂肪酸とは、善玉菌が作り出す、私たちの身体にいい影響を及ぼす物質のこと。善玉菌が元気で短鎖脂肪酸が多いと、大腸がんになりにくい。
つまり、でんぷんを多く食べると大腸がんになりにくいのは、でんぷんのおかげで善玉菌が元気だから、と考えられるのだ。
さらに重要なのは、同じ研究で「でんぷんだけでなく食物繊維でも調べてみたが、『食物繊維を多く食べていると大腸がんになりにくい』という傾向は見られなかった」という指摘があること。やはり、善玉菌を元気にするのは食物繊維よりも炭水化物なのだ。