すると、櫻井の「アメリカ兵を殺してしまった……」という質問にネット上は批判の声が殺到する。
《櫻井翔が元日本兵の方を人殺し扱い。もし自分がこういう無神経な質問されたらその場でブチ切れそう》
《自分で考えたのか台本なのか。温室育ちのアイドルにインタビューさせるからこんな質問でるんだろうが。とりあえずドン引き》
《正直キャスターとしてもアイドルとしてもゴミだということが周知されればいいのに》
櫻井のこの発言で傷ついた人が多くいるのは事実かもしれない。加えてアイドルがキャスターの真似事をしたと思う人もいるだろう。ただ、櫻井を中傷する多くのネット上の声は、彼があまりに無知で、軽い気持ちで質問したと捉えているものが大半だ。
しかし、彼の戦争への思い入れは尋常ではない。
12月7日発売の『Newsweek日本版』では「櫻井翔と『戦争』 戦没した家族の記憶」と題し、約2万5000字のレポートを記している。
思い入れの強い2万5000字
国内外、訪れた先で必ず戦争資料館に赴いているという彼は、冒頭でこう綴っている。
《なぜ私が戦争について取材をし、伝えなければならないと思っているのか。それは、私が遺族だからです》
そう始まった櫻井のレポートは、26歳の若さで戦死した大伯父について多くの証言や資料、写真などを用い、徹底的に調べ上げた内容だ。
大伯父がどんな覚悟で戦地へ赴き、家族やあったはずの青春に想いをめぐらせ「死にたくない」という恐怖を振り切って戦い、どのように散っていったのかまでを刻銘に書き下ろしている。櫻井が抱いている喪失感は間違いなく遺族のそれと言えるだろう。
これまでにも櫻井はキャスターとして「戦争」をテーマに多くの取材をしてきた。
約19万人の日本兵が亡くなった戦地・パプアニューギニアでは“少しでもご遺骨を日本に帰す手伝いができたら”と、這いつくばるように日本兵の遺骨を収集。韓国でも軍事境界線の北緯38度線に赴いたり、ハワイでは真珠湾攻撃について退役米軍兵から当時の話を聞いている。
たしかに『news zero』での櫻井の言葉選びは間違っていたのかもしれない。しかし、アイドルとして、キャスターとして長年発信してきた櫻井が、自分の放つ言葉の影響力を理解していなかったとは考えづらい。
戦争を経験した人も少なくなり、直接話を聞けず後悔している遺族も多い中、櫻井は103歳の吉岡氏に取材することができた。直接的な言い回しでも、本音を引き出し、戦争を風化させてはいけないという目的意識があったはずだ。
吉岡氏は、櫻井からの踏み込んだ質問に、前述のように「命令どおりの仕事をした」と答え、たまらない表情でこう続けた。
「ですけれども、……後からはですね。それとは切り離すと、『戦争はしちゃいけない』ということをですね、一番身をもって知っているのは、私たちだと思っています」
これこそが、櫻井が最も引き出したかった言葉で、戦争を知らない世代に伝えたかったことなのかもしれない。