「マザーキラー」とも呼ばれる子宮頸がん
婦人科がんのなかでも、20代、30代で増加している子宮頸がんは、子育て真っ最中の若い母親が罹患することも多いことが特徴だ。子どもを残して亡くなる患者も少なくないことから“マザーキラー”と呼ばれることもある。
原さんも「若いお母さんが亡くなるのはやりきれない」と話す。原さんがよく知るある女性は、子宮頸がんがわかったのが36歳のとき。ふたりの娘は3歳と1歳だった。不正出血(月経時以外に女性器から出血があること)はあったが育児に追われて受診が遅れ、診断時はすでにステージIV。リンパ節と骨にも転移していた。すぐに抗がん剤治療を始めたが、告知から1年半、幼い姉妹を残して亡くなった。
また、別の患者さんは、子宮頸がんを抱えながら出産を果たしたが、産まれた子どもの肺にがんが見つかってしまう。そのがんを解析した結果、原因は母親の羊水にあったがん細胞を、赤ちゃんが産声を上げたときに吸い込んだことだと考えられた。日本でもまだ他に1例しか確認されていない珍しい症例だった。彼女は手術、薬物治療と、子どもの治療に奔走する。最終的に最新の免疫療法であるオプジーボが功を奏し、子どものがんは消失したが、ほどなく彼女は自身のがんが悪化して世を去った。
「なによりも楽しみであったはずの子どもの成長を見ることなく旅立ってしまい、どんなに無念だったか。こんなに悲しいことはあってはいけない、何とか防げないかという思いを強くしました」
日本では婦人科がん検診の受診率はなかなか向上せず、患者数、死亡者数も増え続けている。その背景には、婦人科がんに対する圧倒的な認識不足があると、原さんは語る。
「私自身も、患者会のみなさんの多くもそうでしたが、婦人科がんになると自分の身にどんなことが起こるのかを知らなかったし考えもしなかった。それでは、予防や検診がいかに重要かも実感できないと思うんです」