東京制作の朝ドラに必要な芸人
「なんといっても忘れられないのは『エール』が遺作になった、小山田耕三役を演じた志村けんさんですね。なかなか映画やドラマに出ない志村さんが笑いを封印して出るのかと思って楽しみにしていたら、放送が始まる前に新型コロナで亡くなられ、初めて登場する回では追悼テロップが流れました。なので、収録済みのシーンが流れるたびに“ああ、もう亡くなってしまっているんだよな……”とショックで。最終回間近には偶然撮れていた映像を使って再登場しました」(成田さん)
朝ドラに欠かせなくなった芸人たち。なぜ彼らは求められるのか。神無月さんは、制作局の違いを挙げる。
「大阪局で制作する場合は一に芸人役としてキャスティングしたい。二に関西の市井の人々、面白い関西人として登場させたい。という理由があると思います。前者の場合は餅は餅屋。後者の場合は、関西弁で軽妙な間合いの演技をしてほしい。実際『わろてんか』や『おちょやん』などは芸人たちのドラマでもあるので、新喜劇メンバーや、芸人の起用は必然だったと思います」
続けて、
「東京制作の場合は芸人というよりも、その役に近いパブリックイメージの役者さんを選んだら、たまたま芸人さんだった、というパターンかも。『ちむどんどん』などの片岡鶴太郎さんや『おしん』などの伊東四朗さんは、何作も東京制作の朝ドラに出演していて御用達俳優の趣きです。
大ヒット朝ドラ『あまちゃん』に漁協の組合長役で出演したでんでんさんは、'91年の『君の名は』、'92年の『ひらり』、'03年の『てるてる家族』、'07年の『どんど晴れ』、'21年の『おかえりモネ』と、東京局、大阪局の両方に出まくっている売れっ子俳優ですが、元はお笑い芸人。東京局は芸人役者というよりも、“芸人の匂いのかすかに残った役者”が欲しいのかもしれませんね」