テレビ局が狙う視聴者の年齢層
このフジテレビ対日テレの視聴率対決は意外な結果に終わった。かつての月9を支えていたのはF1(20歳~34歳の女性)層と呼ばれる視聴者だったが、この日の同層の視聴率は『しゃべくり007』のほうが上だった。物語が社会派ハードボイルドとすら呼べる硬質のものだったことが影響したのかも知れない。
半面、『風間公親』のT層(13~19歳の男女)の視聴率は『しゃべくり007』を上回った。木村の黄金期を知らぬ10代が観ていた。赤楚扮する瓜原刑事の奮闘を自分と重ね合わせた10代の視聴者もいるのではないか。
かつて木村が主演し、同じ月9で放送された『HERO』(2001年)は世帯視聴率で34.3%を記録した。もっとも、いくら良質の作品をつくろうが、その数値を再現できる可能性はゼロと言って良い。前述した通り、テレビ離れやハードディスク録画機の普及によるHUT(総世帯視聴率)の低下が大きな理由だ。
65歳以上の高齢者が世帯視聴率に大きな影響を与える時代になったことも背景にある。高齢者は人数が多い上、テレビをよく観るため、その動向は世帯視聴率を左右する。
高齢者が全人口に占める割合は1980年の9.1%、2000年の17.4%から、現在では約30%に増えている(総務省統計局)。『HERO』放送時から、2倍近い。
また、60代は平日1日にテレビを観る時間は約4時間14分。一方、30代は同約1時間47分(2021年同省調べ)。半分以下だ。高齢者が観ない番組は世帯視聴率が上がらないことが分かる。
だから、どちらかというと若者向けだった『HERO』のような作品を今の状況下で放送しても驚異的な世帯視聴率は得るのは無理だろう。今のドラマの大半が若い視聴者をターゲットにしているのは誰の目にも明らかだが、それが最近のドラマの世帯視聴率が低いことの大きな理由になっている。
ただし、視聴率の標準は3年前に世帯視聴率から個人視聴率に移行したので、世帯視聴率が低くても各局に問題は生じない。商品としての番組の価値は個人視聴率で決まる。
もっとも、『風間公親』は硬質の作品で、普段は月9を敬遠しそうな高齢者も受け入れる気がするから、世帯視聴率も異例の上昇をするのではないか。