とはいえこの番組、決して興味本位のものではなく、シギョンたちはすべてにおいて偏見を持たずに取材を進め、その姿はとても真摯なものとなっている。
日韓の架け橋としてできることがある
「多様性多様性っていくら教科書で教えても、実際には差別がなくならないのが現実だと思います。でも僕は『こういう生き方、こういう考え方もある』というのを見せたいと思って、実際に番組でも何度もそう口にしました。『道徳的ではない』と批判するのではなく、『さまざまな価値観がある』ということを知る。
たとえ『それはちょっと違うな』と思うことがあったとしても、その違いを認めることこそが多様性なんじゃないかと思って。日本では、お店のお客さんがモザイクなしで堂々と応対してくれたりと、自分の好きなものを好きだと言うのは恥ずかしいことではないという姿がいいなと思いました」
日本での活動も増えていく中、11月には新アルバム『こんなに君を』をリリース。リード曲の『こんなに君を』は、日本のヒットメーカーである松井五郎が作詞を、『江南スタイル』で世界を熱狂させたPSYが作曲を手がけた。
「PSYさんがアルバムを出したときに僕が1曲歌ってあげて、その代わりに『先輩の曲を歌いたい。名前も使わせてほしい』と率直に言ったら、快く作ってもらえました。結果、PSYさんらしくて、僕にとって新鮮なバラードになりました」
アルバムには、シギョン自身が作曲した『ただ…』も収録。“バラードの皇帝”“鼓膜彼氏”との異名を取るのも納得、まるで頬に触れられて目の前で愛を囁かれているような気持ちになる珠玉のバラードだ。そう感想を伝えたところ……。
「なんのイヤホンを使っているか教えてください(笑)。あとVRのゴーグルを付けて売りましょう(笑)。でも、そういう感想をいただくのはとてもうれしいですね。曲については、仕上げ作業が終わった後は自分のものではなくなるので、僕からこう感じてほしいというのはないんです。聴く人にそうやって自由に感じてもらえればと」
今後の日本での目標を聞いてみた。
「今、日本ではたくさんの韓国人アイドルが活躍していますが、彼らは自分の意見を自由に言うことが難しいです。でも僕は一人だし事務所のことも気にしなくていいので、その分、日韓の架け橋としてできることがいろいろあると思っています。バラード歌手が日本語を勉強して架け橋になる。これまでに前例がないんですけど、僕はやる気満々です。そのための影響力を持てるよう今後も頑張っていきたいですね」
取材・文/小林延江
11月22日 リリース『こんなに君を』(税込み3080円 発売:キングレコード)
1979年4月17日生まれ、186センチ、A型。’00年韓国でデビュー。翌年の各種新人賞を総なめに。これまでのアルバムのセールスは通算で200万枚以上を記録。韓国を代表するバラード歌手であり、マルチタレント。多くのK-POPアイドルからもリスペクトされている。