昨年、小学1年生になり学校に通い始めた、りおなちゃん。車椅子で過ごしているが、自分の脚で歩くことを諦めたわけではないという。
「月に1度、愛媛から片道5時間かけて大阪のリハビリ施設に通っています。りおなは、かなり周囲に気を使う性格で、幼いながらも" 身の回りのことを全部誰かに世話してもらう申し訳なさを感じている様子。親としては、できることはなんでもしてあげたいんです」
娘の病気は見た目でわかるからこそ偏見の目にさらされやすい
治療やリハビリにはどうしてもお金がかかるため、佳寿美さんはフルタイムで働きながら、りおなちゃんの闘病を支えている。
朝、りおなちゃんを小学校に送り届けたあと出勤。昼休みには再び学校へと向かい、自力では動かせないりおなちゃんの脚の血流が滞らないようマッサージを施す。
その後は会社に戻って通常勤務。そして15時、小学校に行ってりおなちゃんを職場に連れて帰り、定時の17時まで仕事。帰宅後は夫と協力してりおなちゃんのリハビリを行い、さらに家事や動画編集もこなす。
「夫も、動画では『家事や育児をしない』と、りおなに叱られてはいますが(笑)、長男の学童のお迎えに行ったりと家事も育児も分担しています」
幼い子どもの顔をネットにあげることに強く反発する声もある。「子どもで金を稼ぐな」「子どもの病気をだしにして、親が注目を集めたいだけ」など、届くのは肯定的なものばかりではない。
「でも、圧倒的に多いのは温かい応援のメッセージです。りおなにとっては、リハビリのモチベーションにもなっているようで。メディアに取り上げていただくことも増え、病気への理解が少しずつ広がっている実感があります」
SNSを通じて、思わぬ出会いも訪れた。
「YouTubeで発信するなかで親身になってくれるお医者さんとの出会いがあって。その人からのアドバイスで、今は歩けるための治療をしています。保険診療ではないので全額負担ですが、娘にもどんな治療なのかきちんと説明をして、受けることを決めました」
りおなちゃんが受けているのは、再生医療というまだ研究段階の治療法。病気やケガで生じた臓器や組織の障害を、体内の幹細胞をもとに修復、再生するものだ。必ず治る保証はないが、一縷の望みがあるならばと、家族で支え合い治療に励んでいる。
「娘の病気は見た目でわかるからこそ、偏見の目にさらされやすい。直接何かを言われるわけでなくても、距離を置かれたり、腫れ物に触るような扱いを受け、そうした態度に傷つくことも……。娘のポジティブな姿を発信し、病気があっても明るく受け入れてもらえる、娘にとって生きやすい社会を用意してあげたい─そう願って、発信を続けています」
取材・文/大野瑞紀
佳寿美さん(ちいりおママ) 1988年生まれ、愛媛県在住。2014年に長男を、2017年に長女・りおなちゃんを出産。娘の病気について発信しようと2021年にSNSをスタート。" ちいりおママ”として、りおなちゃんとの共著『今日もさわやかに麗しく生きていきましょう』(KADOKAWA)を上梓