市販の風邪薬や抗生物質を服用
風邪をひいたときに薬局で簡単に手に入る風邪薬はありがたい。症状が軽いうちに早めに飲んで、治そうとするのが一般的だろう。しかしほとんどの医師は市販の総合感冒薬は飲まないとか。再生医療の研究や普及に尽力する北條元治先生が解説してくれた。
「早めに薬を飲んだから早く治るというわけではありません。自然治癒を待つしかないことを医者は知っているのです。ただし対症療法として熱が上がれば解熱剤、のどの違和感には去痰(きょたん)剤など、症状に合わせて薬を飲むことはありますよ」
風邪薬は症状を和らげることはできても、風邪そのものを治す効果はない。さらに総合感冒薬は咳(せき)、鼻水、痛みの緩和のために多くの成分が混合処方されており、すべての症状がない場合、不要な成分を取り込むことになってしまう。
高齢者の場合は抗コリン作用のある成分により尿が出にくくなるリスクや、眼圧上昇や口の渇き、便秘などの副作用にも注意が必要だ。
またサリチル酸系解熱剤の成分はインフルエンザ脳症を悪化させるリスクがあり、疑いがある場合は特に控えたほうがよいだろう。
「これはもう絶対にダメ!というレベルですが、風邪のときに抗生物質も飲むべきではありません。風邪のほとんどがウイルス性疾患なので抗生物質が効かない。
不必要に飲んでしまうと抗生剤が効かない耐性菌を増やすことにつながり、いざというときに耐性菌に侵されてしまうかもしれない。自己免疫でウイルスをやっつけられるのに、わざわざ敵に手の内を知らせているようなものです」
ただし、二次感染として扁桃(へんとう)炎や、肺炎球菌によって肺炎になっている状態であれば抗生物質を処方することもあるという。
いずれにしても世界的には耐性菌の問題から抗生物質の投与を控える傾向にあるが、日本ではいまだに気軽に用いる風習があり、北條先生は警鐘を鳴らしている。