日々医学論文に目を通し、科学的に正しい根拠を示しながら健康や生活に関する情報を発信しているのが、柳澤綾子先生だ。親世代から受け継いできた生活の知恵のなかには、現代の知識で再検証すると正しくないことも多いという。
擦り傷、切り傷ですぐに患部を消毒
転倒して擦り傷を作ったり、料理中に切り傷ができると、染みるのを我慢しながら消毒液を塗って化膿(かのう)を防いできたが、これは大きな間違いだそう。
「傷口をヨード系消毒液で消毒した場合と、生理食塩水で洗浄した場合の差を調べた実験では、確かに消毒液を使ったほうが傷口の細菌数は減少していました。
しかし4日後に患部の細菌感染率を見てみると、消毒液を使った場合の感染率はなんと100%。それに対して、生理食塩水で洗った場合はまったく感染していませんでした」
これは消毒液が傷を治すために必要な繊維芽細胞の増殖を抑制していたり、細菌と戦うために必要な白血球や、免疫機能を持つマクロファージにとっても悪影響を及ぼす可能性があるからだそう。
「ケガをしたときはまず砂利などの異物が入り込んでいないか確認し、傷口を生理食塩水で洗浄することが大切です。もちろん流水でも大丈夫なのですが、浸透圧の影響で生理食塩水が一番染みないんですよ」
家でも分厚い靴下をはく
多くの女性が悩まされる冷え性。春先にかけても足先が冷える、末端冷え性の人も多いだろう。分厚い靴下をはき、モコモコのボアがついたブーツで外出、帰宅しても靴下はそのまま……そんな人は注意が必要だ。
「冷え性を和らげるには血管を緩めて血流を改善すると良いのですが、締めつけのきつい靴下やブーツを履き続けると、逆に血流が阻害されてしまいます。
さらに足裏は想像以上に発汗量があり、その汗が靴下の中で蒸発しきれず湿った状態が続くと、よりいっそう足が冷えてしまいます」
冷えだけでなく衛生面にも問題がありそうだが、ではどうしたらよいのだろうか。
「帰宅したら靴下は脱ぎ、足首を締めつけないタイプのものにはき替えましょう。動脈が体表近くを走っている足首は、血流を妨げないことが重要です。おすすめは締めつけのないふわふわしたレッグウォーマー。通気性がよく、暖かいものがよいでしょう」