櫻井サイドが主役以外を望んだか

 ただ、あくまで筆者の考察だが、ドラマ制作サイドが主演から降ろしたというよりは、櫻井サイド(STARTO ENTERTAINMENT社)があえて主役以外での出演を提案したのではないかと考えている。

 実は、今回出演する『笑うマトリョーシカ』には原作小説があり、原作では櫻井演じる若手政治家が主人公なのだ。つまり、原作どおりなら櫻井が主役となるのだが、ドラマ版はわざわざ設定変更して水川演じる記者を主人公にしているということ。

 今までに逆のパターンはあった。

 記憶に新しいところだと、Sexy Zone(現timelesz)の菊池風磨(29)が昨年主演した『ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある』(日本テレビ系)は、原作漫画『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』では彼が演じるキャラは主人公ではない。

 このように、旧ジャニーズ事務所の俳優を主演にするためなのか、原作では主人公ではなかったのにドラマでは旧ジャニタレの役が、主人公に改変されていたという事例はあったのである。

 かつては旧ジャニーズ事務所の業界内での“力”が強かったため、テレビ局の忖度が働いていたと考えられるが、STARTO ENTERTAINMENTになって“力”が弱まったとはいえ、さすがにテレビ局が原作改変してまで櫻井を主人公から降ろすとは考えにくい。

 となると、やはり櫻井サイドが自主的に主役以外を望んだという可能性も充分ありえるだろう。

織田裕二、稲垣吾郎の路線に……?

 22年ぶりに主役以外で出演する嵐・櫻井翔

 この事態を見て、嵐全体の人気低下や櫻井の主演失格といったネガティブな考察もできるかもしれないが、櫻井サイドが自発的に主役以外を選んだのだとしたら、ポジティブにとらえられる。

 昨年、織田裕二が『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(テレビ朝日系)で主人公のバディ的なキャラを演じ、30年ぶりに主役以外の出演とのことで注目を集めていたが、結果的に脇でも抜群の存在感を放って実力を再評価されていた。

 先輩“国民的アイドルグループ”だったSMAPの元メンバーで、若いうちから数々の作品に主演していた稲垣吾郎(50)も、近年はバイプレイヤーとしても積極的に出演しており、独特な個性を放つ役者という地位を確立している。

 長年、主演オファーが続いていた俳優が主人公以外を演じると、“都落ち”のようなニュアンスで見られることもあるが、主役に固執しないことで役の幅が広げられるといったメリットも多いはず。

 主人公ばかり演じているとどうしても“正義キャラ”の印象が根付いてしまうが、今回櫻井が演じる政治家は闇が深そうなクセのあるキャラクターのため、従来のイメージを払拭する好機となるかもしれない。

 櫻井にとって20年以上ぶりの主役以外の出演は、役者として次のステージに進むために必要なステップなのではないだろうか。