伝説をつくった東西の芸人たち

 トップ3は、まさにレジェンドと呼ぶにふさわしい3組が選出された。

「客席を巻き込んで笑いをとるのが上手。優しさにあふれていたので面白かった」(長野県・65歳・男性)

 などの意見を集めたコント55号が第3位。増田さんが、

「萩本欽一さんの番組は、素人やキャリアの浅いタレントを起用することで人気を博した。坂上二郎さんを巧みにコントロールした萩本さんだからこそ」

 と評するように、ドタバタを逆手に取った笑いに心をつかまれた人は多数。

 その意味では、2位も暴れ馬と天才ジョッキーという組み合わせかも。

「賛否両論あると思うが、個性がなくなってきている今の時代にこそ必要な存在のように思う」(岐阜県・66歳・男性)

 横山やすし・西川きよしを支持する声は大きく、特に破天荒なやすしに対しては、「あんなめちゃくちゃな人はもういない」と惜しむ声も。

「当初は、やすしさんに圧倒されることも少なくなかったきよしさんですが、やすしさんが問題行為で漫才ができない間、きよしさんは笑福亭仁鶴さん、桂三枝(現・六代目桂文枝)さんとともに司会を務め、腕を磨いた。

 その結果、やすしさんに負けない存在感を放つようになり、やすきよ黄金期をつくり上げた」

 小さなことからコツコツと──。西川きよしが口にするからこそ重みがあるのだ。

 そして、栄えある第1位はダントツで票を集めたザ・ドリフターズ

『8時だョ!全員集合』が忘れられない。批判もたくさんあったが、老若男女が笑える面白さはこの人たちだからこそ」(愛知県・55歳・女性)

ザ・ドリフターズ(左から志村けん、仲本工事、いかりや長介、加藤茶、高木ブー)
ザ・ドリフターズ(左から志村けん、仲本工事、いかりや長介、加藤茶、高木ブー)

 などなど、大人から子どもまで爆笑させるエンタメ力に舌を巻く意見が多数。

 この時代は6時にニュース、7時にアニメ、9時以降は少し大人な雰囲気が漂うテレビ番組といった流れが存在した。そのため、8時台はその端境ともいえ、コントや合唱団パートなど誰でも楽しめる要素に加え、「チョットだけヨ」に代表されるお色気ギャグなど、幅広い世代が楽しめるコンテンツが集合。

『ドリフ大爆笑』でもレンジの広いコントを披露していたことからも、男女共に多数の票を集めたのも納得だろう。

「もう一度見たい昭和のお笑い芸人」ランキング
「もう一度見たい昭和のお笑い芸人」ランキング

「今のお笑いは、見ている人に知性が求められるようなものが少なくない。一方、昭和のお笑いはシンプル。難しくないですよね。見方によっては、マンネリのように映るかもしれませんが、何度見ても飽きません。宝物ってそういうものですよね」

 動画配信サイトなどで、往年のお笑いを気軽に見ることができる昨今。折を見て、宝物に触れてみてはいかがだろうか。


取材・文/我妻弘崇

増田晶文(ますだ・まさふみ) 作家。1960年、大阪府生まれ。お笑い関連の著作として『お笑い芸人就職読本』、6年にわたる取材を敢行した『吉本興業の正体』がある。代表作に『稀代の本屋 蔦屋重三郎』『河内熱風録 楠木正成』など。最新作は時代小説『たわけ本屋一代記 蔦屋重三郎』(講談社)