マイナンバー制度に便乗した巧妙な手口、住宅業界でまかり通るグレーな契約、老人ホームの信じられない責任放棄……。そこで、あの手この手で迫り来る魔の手を遠ざける鉄則を専門家にアドバイスしてもらった。
オレオレ詐欺と同様、いたちごっこの状況が続くのが『還付金詐欺』。市役所や税務署、社会保険事務所を名乗る人物から電話があり、医療費や税金の還付金があるといってATMに誘導する手口だ。
「10年前から被害相談件数は増加傾向にあり、昨年度は2388件。銀行窓口の見守りが強化され、コンビニやスーパーのATMに誘導されるようになりました」(国民生活センター担当者)
“医療費を還付する”といわれ、ATMの前で指示どおり操作した60歳男性は、いつの間にか相手口座に100万円振り込んでいたという。機械に不慣れな高齢者を狙った大胆な手口だが同様の被害は後を絶たない。
昨年度に全国の消費者センターに寄せられた被害相談は約95万件。うち20%が70歳以上の高齢者だ。お金、健康、孤独の“老人3大不安”をあおり、年金や貯蓄を容赦なく吸い上げていく。
被害を防ぐ最善策は、言葉巧みな詐欺犯と話し込まないこと。
「詐欺被害の入り口のほとんどが電話をきっかけにスタートします。発信者の番号を表示する設定にして、知らない人物からの電話は留守番電話で対応。また、『通話録音装置』を利用すれば、“この電話は録音されています”と警告したうえで通話内容を録音できます。これは詐欺グループが嫌がるので効果的。無料貸し出しをしている警察署や自治体もあるのでチェックしてください」(国民生活センター担当者)
さらに注意が必要なのが、お年寄りから若い人まで被害が広がる『劇場型詐欺』。まるで演劇のように、複数の業者が入れ替わりで登場し、それぞれの役割を演じて消費者をダマしにかかる。
「最近は老人ホームの入居権をめぐる被害が急増しています。これは親切心につけ込んだ手口ですね」(国民生活センター担当者)
そのシナリオは、まず地域限定などと謳った老人ホームの申込書付きパンフレットが自宅に届く。その後、このような懇願する電話がかかってくる。
「入居資格はパンフレットを持つあなたにしかない。その老人ホームに入りたい人はたくさんいるので、せめて名義を貸してほしい」(国民生活センター担当者)
被害者が応じると、国税庁や警察など公的機関を名乗る人物から「名義貸しは違法」と脅しをかけられ、あおるように示談金を請求される結末が待っている。
「同様に“あなたの個人情報が流出しているので削除しますか?”という電話も、最終的には他者に代行させたことを“違法”と指摘され、示談金を請求される。劇場型では定番の手口です」(国民生活センター担当者)
これらの詐欺は、ダマされたというより、“自発的にやってしまった”という気持ちが強く、被害者意識を持ちにくいことが特徴だ。