狭い日本だけど、ところ変われば人柄も暮らしぶりも、常識さえ変わるもの。医療・暮らし・男女の項目別にチェックしてみると、意外な発見が! 国民病と呼ばれるがんも地域によって差があるようだ。
近年、急増している大腸がんを例に見てみよう。死亡率が高い都道府県のトップ5は、1位秋田県、2位青森県、3位岩手県。以下は表のとおり続き、47位が沖縄県という結果に。
「ランキング上位の地域は、食事の塩分摂取量が多い、飲酒量が多い、日照時間が短い点が共通項。どんよりとした天気が多いところでは、紫外線を浴びることで生成される体内のビタミンDが不足しがちになり、発がんリスクが高まる恐れがあるのです」
と医学ジャーナリストの植田美津恵さん。車社会という地方特有の交通事情も、死亡率を引き上げている。
「車がなければ移動もままならない地方は珍しくない。歩く機会が少ないため運動不足に陥りやすいのです」(植田さん、以下同)
何を食べて、どのくらい運動しているのか。生活習慣は寿命にも影響を及ぼす。
「長寿県といえば、なんといっても長野県です。男性で80・88歳、女性で87・18歳の平均寿命は男女ともに全国ナンバーワン。県を挙げての食生活改善が功を奏したといわれています」
長野では野沢菜漬けをお茶うけにするのが習慣。塩分摂取量が多く、脳卒中の死亡率も高かったという。
「そこで戦後すぐに“食生活改善推進員〟という制度を作り、栄養士や看護師、保健師らが地域の女性を集めてレクチャーを行ったんです。そのとき、特に重点を置いたのが塩分を控えめにすることでした」
また、65歳以上の就業率が高いことも長寿の一因。
「同じく就業率が高い静岡県、福井県も、平均寿命はトップ10入りしています」
気になるのが青森県だ。大腸がんの死亡率は2位、平均寿命は男女ともにワースト1位……。
「高血圧や糖尿病の人が多く、塩分摂取量も喫煙率も高い。健康的にいろんな問題を抱えている県ですね。日照時間の短さも、寿命に影響していると思います」
【お話を伺った人】
植田美津恵さん・・・医学博士、医学ジャーナリスト。首都医校教授。大学で教壇に立つほか各メディアで活躍。近著に『忍者ダイエット』(サイドランチ)