食品横流し問題で一因と言われた「食品ロス」。日本では、食べられるのに捨てられている「食品ロス」は年間642万トンで、そのうち約半数が家庭からの廃棄です。安売りや特売で買いだめしたり最後まで使いきれずに捨ててしまったり……“もったいない”をもう1度、見直してみませんか?
外食時の食べ残しを減らすアイデアのひとつ、ドギーバッグ。犬のエサにという建前で余った料理を持ち帰ったことから名づけられた持ち帰り容器のことだ。
発祥のアメリカではたいていの飲食店でドギーバッグが用意され、フランスでも今年1月に提供を義務づける法律が施行されるなど、欧米では一般に浸透している。
しかし日本ではまだまだ。その理由について、2009年からビュッフェ形式の宴会でドギーバッグの提供を行う立川グランドホテルの佐藤総支配人はこう話す。
「店舗側の負担が非常に大きい。現状、何のルールもないので自ら食中毒対策として、持ち帰りができる料理はすべて年に1回、専門機関の細菌検査を受けています。そのうえドギーバッグ利用は“自己責任”ですよ、ということをお客様に周知しています」
検査料は1品につき約8000円。ドギーバッグ本体を含む梱包材などが1セット50円程度とかかり費用も少なくない。それでも提供を行う理由は?
「年間約1000個の利用があり、お客様の評判もよいので続けています。今後は行政がドギーバッグ利用について、一定の衛生条件をクリアできていれば、食中毒などの責任を免除するなどの方向を積極的に示すことが普及につながるのではないでしょうか」(佐藤総支配人)
また、松坂屋上野店では“食品もったいないセール”を2010年から始めた。
「最初は、賞味期限間近の商品を売ることに、社内で反対や心配する声がありましたが、ふたを開けてみたら、お客様には、ご好評をいただきました」(催事担当・浅川幸治さん)
きっかけは“もったいない”という言葉が、世界で注目されていたことや、すでに食品の卸売りやメーカーが抱えていた在庫品をネット通販で取り扱っていたこともあり、ノウハウを生かして、リアル店舗でもスタートさせたことから。
同セールは年2回開催され、年々規模が拡大、取り扱う商品も大幅に増えた。今年2月の催しには、約3500種類、18万点の商品が並んだ。アサヒ飲料の缶ジュースが1本54円、老舗メーカー、ハインツのビシソワーズスープ1袋(160g)64円といった目玉商品や、賞味期限間近の食品を販売。1週間開催され、1日の平均来場者は約5000人を数えた。
先駆者である松坂屋上野店は、品ぞろえの豊富さが人気の要因で、後発のライバル百貨店やスーパーとの差をつける。
「スーパーに並んでいないものや、百貨店仕様の商品が、破格の値段で買えることも魅力だと思います。心待ちにしているお客様は多く、開催中に“次はいつ?”と聞かれたり、電話でも問い合わせをいただきます」
テレビやメディアでたびたび紹介され、認知されたこともあって、取引先も増えたという。
「消費者にとってはお買い得で、小売りの百貨店は売り上げにつながり、卸売りやメーカーは不良在庫が減らせる。みんながウィンウィン(良好な関係)になれる催しだと思います。これからも“もったいないセール”を続けて、少しでも食品ロスを減らせる協力をしていきたいと思います」
次回は、6月1日(水)~9日(木)に開催される。